ざっくり言うと
1.最初の目的は「謝罪の言葉を引き出す」こと。要求は実費程度
2.次の目的は「性行為の言質を得る」こと。
3.伊藤さんは示談を断っている
4.「恐喝」なら、警察への相談を取り下げることを取引材料にするはず
伊藤さんのメールは「妊娠の不安を利用した恐喝」ではないかという趣旨のことをいう人達がいますので、このエントリでその点について考察します。
まず簡単に経緯を振り返ります。伊藤さんの著書「ブラックボックス」から、関連する出来事を抜き出します。
4月3日 事件発生
4月4日 緊急避妊薬の処方を受ける
4月15日 捜査員とホテル防犯カメラを確認
4月17日 産婦人科を受診、「妊娠の可能性は低い」と判断される
4月18日「妊娠の不安」に言及するメールを送る
4月23日 法テラスの弁護士に相談
4月28日 被害届および準強姦容疑での告訴状を提出
17日から18日にかけて、「妊娠の可能性は低い」と産婦人科医が判断したにもかかわらず「妊娠の不安」を口にするのはおかしい、というわけです。なるほど一見一理ありそうですが、詳しく見ていきましょう。
最初の目的は「山口さんから謝罪の言葉を得る」こと。要求金額は実費程度
伊藤さんの説明では、4月15日にカメラ画像を確認後、警察は事件性を意識しはじめたとあります。捜査が本格的に始まる前に、18日のメールに「妊娠」というワードを入れることで、まずは謝罪の言葉を引き出したかったと説明しています。現にメールには「謝罪の言葉がないのはどうかと思います。そして医療費も負担してください」とあり、実費以上の費用は要求していません。山口さんも同日「あの夜の事でコストがかかっているなら、それはそれで考えます」と返信しています。
次の目的は「山口さんから性行為の言質を得る」こと
伊藤さんは、23日に法テラスの弁護士から「準強姦の立証のためには性行為が行われたこと、同意がなかったこと」の二つが重要とアドバイスを受けました。その後、伊藤さんは山口さんとのメールで何度も「妊娠の心配」を語ったのは、アドバイスに従って「性行為が行われたことの言質を取る」ためだったのでしょう。実際、山口さんから「精子の運動が低調な病気です」という返信を引き出しており、「避妊具のない性交が行われた」ことを山口氏が認めた形です。
伊藤さんは示談(金銭解決)を断っている
伊藤さんは、著書で後日(2015年夏頃?)山口さん側からの示談を断ったと記載していますが、山口さん側も訴訟で示談の申し出を行ったことを認めています。
金額を始め詳細は明らかにされていませんが、伊藤さんはこの示談も一顧だにせず断り刑事の手続きを進めており、金銭を目的としていたとは考えづらいです。
「恐喝」なら、警察への相談を取り下げることを取引材料にするはず
伊藤さんは4月9日の時点で警察署への相談を行い、28日に被害届を提出しています。伊藤さんが妊娠の不安を表したのは18日のメールからですが、これが恐喝目的であれば、金銭と引き換えに警察への相談を取り下げるという取引を持ちかけるのが普通だと思いますが、伊藤さんは警察への相談を匂わせる内容のメールすら送っていません。
なお、伊藤さんが実際に強く妊娠を心配していたことは、著書ブラックボックスのKindle版No1210-20あたりに詳述されています。口さがない人たちは「こんな記述はウソだ」と言うかもしれません。これは内心のことですので私にはわかりませんが、緊急避妊ピルの効果は100%ではないこと、その後も予定された時期に月経発来がなかったということから、少なくとも不合理な心配とは言えないと感じます。
最後までお読みいただき有り難うございました。次回は「カルテには伊藤さんに都合の悪いことが書かれているのか:北口弁護士の主張」をお届けすることとします。