伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

カルテが伊藤さんにとって不都合ではない3つの理由と、北口弁護士のトンデモ尋問

 

伊藤さんはプライバシー保護のためにカルテ内容に閲覧制限をかけていますが、実際にはカルテには伊藤さんにとって都合の悪いことが記載されているから隠蔽しているのだろう、という主張が一部に見られます。

 

一審で山口さんの代理人を務めた北口弁護士は、判決後の記者会見で「昨日の判決は誤っている。山口さんは絶対にレイプ犯ではない。理由は非常に簡単です。伊藤詩織さんが『 Black Boxで書いていることは、彼女が受診した複数の医師のカルテの記載内容とまったく矛盾している。」と述べています。

news.yahoo.co.jp

 

言うまでも無く、裁判官はカルテを読み込んだ上で他の情報とも併せて総合的に判決を下しているので、北口弁護士の主張は負け惜しみに過ぎないのですが、本エントリでは、記者会見での北口弁護士の指摘を一つずつ粉砕することで、カルテには不都合なことなど記載されていないことを示します。


産婦人科「妊娠の可能性」「性交が行われた時間帯」


(北口弁護士の主張)


伊藤さんは事件の当日、避妊のためピルを飲んでいます。彼女はピルを飲んだ5日後に月経があったと医師に申告しています。そのため医師は、伊藤さんは妊娠の可能性がないと、ほとんどなくなったと診察しています。それにも関わらず、伊藤さんはそのあと山口さんに何度もメールをして、妊娠の不安を訴えています。

 

 

 

「妊娠の不安」については別記事ですでに説明しましたのでご参照ください。

greenbox2020.hatenablog.com

 

また、産婦人科カルテについては、判決が見事に過不足無く言及していますので、判決を閲覧した方による書き起こしを画像でお示しします。(プライバシーの関係上、医院の名前は雑ではありますが黒消しを施しています)

f:id:greenbox2020:20200618182158j:image

 

 


整形外科「脱臼」「受傷日時」

(北口弁護士の主張)


伊藤さんは膝の、腰の脱臼のために歩けなくなったと主張して、事件後に整形外科の医師、クリニックを受診しています。彼女は整形外科の診療所で腰の痛みを訴えていなかったし、歩行困難さえ訴えていなかった。整形外科の先生はレントゲン検査もしていません。
重要なことは、彼女がなぜそのような膝の痛み、膝の骨折を訴えたか、その原因について、外傷を受けたと主張していますけど、その外傷を受けた日が、この山口さんと出会った日ではなくて、それより4日前に外傷を受けたと医師に話しています。

 

 


伊藤さんが整形外科を受診したのは4月6日で、事件から3日後。このとき、「知人に暴行されたと話すわけにもいかず」事件の数日前に受傷したと話した、と著書ブラックボックスですでに説明しています。また、伊藤さんは一度も「脱臼のために歩けなくなったと主張し」ていませんのでこれは北口弁護士の嘘です。最後に「歩行困難さえ訴えていなかった」とありますが、整形外科を受診した時点ではちゃんと歩けただけのことでしょう。


精神科「記憶を失った時間帯」

(北口弁護士の主張)

精神科の医師に、当日の記憶はまったく残っていないと述べて、それがカルテに記載されている。当事者本人、患者本人が記憶していない出来事を彼女がどうしてそのあと『Black Box』に書かれているように、あんなレイプ犯罪を生々しく、具体的に書くことができましょうか。人間は忘れたことを思い出すことはできません。

 

 

北口弁護士は、「精神科のカルテによれば、伊藤さんの当日の記憶は全く残っていない。だから、伊藤さんがblackboxに書いたことは全てウソまたは妄想だ」と主張しているようです。

しかし、 精神科の診療は警察の取り調べではないので、「事件当日の何時から何時まで記憶がないのか」といった細部まで記録する必要はありません。また、事案の性質上正確な聞き取りを行うことそのものが患者へ大きな負担となりますから、精神科医が根掘り葉掘り質問・記録しないのは当然です。

伊藤さん自身は、「鮨屋で2回目のトイレに入ってから午前5時頃ホテルで目覚めるまで記憶がない」と何度も主張しています。精神科のカルテと完全に一致していなくても特に問題はありません。

 

 

自らの依頼人に誘導的尋問をしかける北口弁護士

 

以上のように、伊藤さんのカルテには伊藤さんにとって都合の悪いことなど書かれていないことを、北口弁護士の判決後会見から示しました。最後に、北口弁護士が法廷で行った尋問の中で最も出色のものをご紹介いたします。

 

www.opentheblackbox.jp

 

伊藤さんの民事訴訟を支援する会の方がまとめた傍聴記録ですが、私が最も注目したのは以下の部分です。

 

山口氏は詩織さんが店を裸足で歩き回り、他の客に話しかけたりなど泥酔していったと語る。
山口氏「(詩織さんが)酔っ払ってしまって、裸足で店内を歩き、見知らぬお客さんに話しかけたりなどしていたので大変、よく覚えている」
この後の北口弁護士の言葉は衝撃だった。
北口弁護士「レイプドラッグなんて使う必要、全くないわけですね
どういう意味か計りかねるが、完全に、性犯罪者の視点である。酒を飲んでいるからレイプドラッグを使う「必要」がない、としか聞こえない文脈だ。さすがに山口氏も動揺する。
山口氏「もともと(レイプドラッグの)存在を知らないし。必要と・・・・・その質問にお答えはしたくない

(太字は引用者による)

 

もし、山口さんがこの質問にyesと答えてしまったら、山口さんは伊藤さんと性行為を行う目的で伊藤さんを酔わせたということになります。山口氏は咄嗟に質問の意味に気づき、質問には答えませんでした。山口さんは伊藤さんだけでなく北口弁護士とも戦っていたのかと思うと気の毒にはなります。

 

今回は以上です。お読みいただき有り難うございました。次回のお題は「伊藤さんはホテルの防犯カメラ動画を隠していない」の予定です。

 

 

(補) 

それぞれのカルテに残されている「時間」の記録は以下の通り。

 

4/4 A産婦人科

 性行為は4日の午前2-3時

4/17 B産婦人科

 被害に遭ったのは3日からから4日にかけて

5/上旬 C産婦人科

 被害は4月3日

5/20〜  D精神科

   4日の午前5時に被害にあったが記憶がない