伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

伊藤さんの訴えは2時→5時とか強姦致傷がどうのなどと変遷しているのか

 

 

 

 

 親切な方が教えてくれたのだが、最近lisanha123氏が以下のようなツイートをしておられるとのことだ。

 

 

 

 

 伊藤さんの主張は主要部分で何度も変遷する一方、山口氏の主張は一貫して変化がなく、山口氏の方が信頼できる、という主張のようだ。

 

このエントリではlisanha氏の「募集」に応じ、当該図表について、検討を行ってみたいと思う。lisanha氏の期待に添えると良いのだが。

 

 

 

 

まず最初に結論を述べると、

1.伊藤さんが警察で主張した内容は、供述調書が公になっていない以上、推測するしかない。つまりlisanha氏の図表は推測に過ぎない。

2.伊藤氏の主張が変遷しているというlisanha氏の主張は一面的であり、変遷していないという推論も可能である

というところ。ではやっていきましょうか。

 

 

 

 

まず図表の左側、伊藤さんの主張部分から検討していく。伊藤さんの訴えは、2時→5時とか強姦致傷がどうのなどと変遷しているのだろうか。

 

 

 

大前提として、事件後に伊藤さんが警察に訴えた内容=供述調書は公開されていないという事を押さえておくべきである。

 

伊藤さんは、著書ブラックボックスの中で、「起こったことを全てありのままに警察に明した」と主張しているが、これが本当かどうか、実のところ客観的に証明する術はない。その代わり伊藤氏は、一審では当時の捜査員を証人として申請し、主張が一貫していることを証言してもらう予定であったようだ。ただ、裁判所が「それには及ばない」と判断し、判決に至ったという経緯がある。

 

 

従って、lisanha氏の当該図表は氏による推論の産物でしかないということになる。lisanha氏の議論の中で、伊藤さんが被害時刻を午前2時から3時と警察に申告したことになっているのは、当該図表枠外、右上部分の「警察の捜査は一貫して午前2-3時の性行為に関してであるから」というのが根拠のようだが、これはあくまで山口氏が「自分は2-3時のことしか警察で聞かれていないから伊藤さんは2-3時だと話していたはずだ」と主張しているものに過ぎない。なぜ、山口氏の主張したことがそのまま客観的事実となるのか理解に苦しむ。

 

 

告訴状の内容は

 

2015年4月30日に提出された告訴状では、被害時刻について「4月3日午後11:30から4月4日午前05:30頃までの間」となっている。これはおそらく、ホテルの防犯カメラ映像から午後11時20分頃に入室し翌朝午前5時50分頃に退室した事がわかる事、そして伊藤さんがこの間の大半記憶を失っており、被害時刻を確定することができないため、広めに表現したのだろう。なお、伊藤さんが午前5時と言っているのは、あくまで記憶に残っている部分に過ぎず、それ以外の時間帯にも被害があった可能性を排除できないこと(※)にも留意が必要だ。

 

 

またlisanha氏は、告訴状に膝や腰などにできた体の傷のことについて記載がなく、準強姦罪での告訴となっていることから、「伊藤さんは事件当初、山口氏から受けた傷害について申告していなかったのではないか」と推測しているようだ。この点について、伊藤さんの「警察では経験したことを全て話した」という主張が正しいとした場合、以下のような経緯があったのだろうと推測している。

伊藤さんは4月6日に整形外科を受診した。後に発行された診断書に「みぎ膝挫傷」という診断があることから、何らかの外傷の痕が皮膚にのこっていたのだろう。しかし、伊藤さんは、整形外科を受診した際、事件の事を医師に語れずに「受傷は3月30日頃」と申告してしまった。警察としては、これを4月4日の事件時の受傷によるものと主張するのはさすがに筋が悪いと考えた。
また、伊藤さんは4月17日頃に、外陰部などの受傷をチェックするため婦人科を受診した。このときは性的暴行を受けたという申告を医師に行っているのだが、受傷時から時間経過しすぎていることもあり外傷は残っておらず、傷害の確証を得ることはできなかった。
以上のように、医療機関での診断書は上述の通り証拠として用いることができず、自身で残した写真などの証拠もないため、警察は傷害の上乗せを断念、準強姦罪での告訴が妥当と判断した。

 

 

 

また、「デートレイプドラッグ」の使用についても、4月30日に提出された告訴状では言及がない。が、これも採血や尿検査などで証拠が得られているわけでもないことから、アルコールによる酩酊状態に乗じた準強姦があった、というストーリーでの告訴を行うことにしたのだろう。アルコールだろうが睡眠薬だろうが、準強姦罪の構成要件としては問題ないからだ。

 

「ノートパソコンによる盗撮」も同じ事。告訴状が提出された時点では伊藤さんが「撮影されていると感じた」というだけで何ら確証はないのだから、むしろ告訴状で言及する方が不自然である。

 

この場合、残るのは確証がないことを本に書いていいのかという議論だが、現在山口氏による伊藤さんに対する名誉毀損訴訟が進行中であるから、その結果を待っていれば良い。

 

なお、伊藤さんが5月6日に山口さんに送ったメールには、膝などの受傷についての訴えが残っていることが、当該図表では反映されていないことにも留意が必要だろう。

 

以上の仮説は、19年7月の本人尋問で伊藤さんが行った「体の怪我のことも警察に申告したが警察が準強姦罪の告訴とした」という説明とも整合する。

 

 

 

図表のうち、杉田水脈訴訟の部分の「酔って覚えてないので証明できない」というのは、おそらく上述(※)部分のことを言っているのだろう。

 

次に、民事訴訟控訴審の「強姦致傷、DRD、盗撮、全て自分が思ったことが事実ということを摘示した=事実ではないと自白」という部分については、おそらく伊藤さん側が、山口氏側からの名誉毀損での反訴に対して「傷や睡眠薬、撮影については、確証がないということを著書で明記している」と反論した部分を指しているのだろう。

 

以上で、伊藤氏の著書や発言を読み解くことで、主張に特に変遷はないと解釈できることを示した。駆け足で述べたので、なにか不足の点があればコメント欄で指摘してほしい。

 

続く次回のエントリでは、「山口氏の訴えはどのように変遷したのか」について検討する。