伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

伊藤詩織さんに対する虚偽告訴罪/名誉毀損罪の告訴が不起訴となった意義とは

ざっくり言うと

 

1.今回の不起訴処分で、「地裁の裁判官がおかしかっただけ」という伊藤さん攻撃派のロジックは破綻

2.今後、彼らはさらなる個人攻撃に走り、尖鋭化・過激化の一途をたどるだろう

3.伊藤さんはリスクをとって被害を告発した点を賞賛されているのであって、不当な優遇は受けていない

 

 

 

 

www.buzzfeed.com

 

Buzzfeedの報道によれば、

元TBS記者の山口敬之さんが、虚偽告訴と名誉毀損の疑いでジャーナリストの伊藤詩織さんを刑事告訴したことについて、警視庁の書類送検を受けていた東京地検は12月25日、伊藤さんを不起訴処分とした。関係者が明らかにした。 

 

とのことである。不起訴という判断そのものは、当ブログの予想どおりだ。山口氏が告訴状でどのような主張をしたのかわからないが、もしも、伊藤さんを起訴に至らしめるような強力なネタを山口氏が掴んでいるのならば、民事訴訟でもとっくに提出しているはずだからだ。

 

 

当エントリの限界

 

バズフィードの記事は「関係者が明らかにした。」とのことで若干モヤっとしたものが残るが、このエントリでは当該報道を事実と仮定して論じていく。また、山口氏が虚偽告訴・名誉毀損の告発においてどのような主張を行ったのかは、buzzfeed記事内で伊藤さんも言うように明らかではないため、今回の不起訴処分がどこまでの意味をもつのかは明言できない部分もある。

また、「嫌疑不十分」と「嫌疑なし」の違いや、「まだ検察審査会がある」などの議論、あるいは虚偽告訴罪名誉毀損罪の構成要件などの話には踏み込まず、「伊藤さんは山口氏を名誉毀損してないし伊藤さんの訴えは虚偽ではなかったと検察が判断した」という(大雑把な)捉え方に基づいた議論を進めていく。

 

 

 

「地裁の裁判官がおかしかっただけ」というロジック

 

 

伊藤さんを執拗に攻撃する人達がよく用いていたロジックは、

 

伊藤氏による、山口氏への準強姦罪での告訴は不起訴となり、検察審査会でも不起訴は妥当だと認められた。これらは我が国の司法当局による正当な判断だった。にも関わらず、民事訴訟では東京地裁は伊藤さん勝訴の判決を書いた。これは、地裁で担当した裁判官がおかしかっただけで、高裁では山口氏勝訴の「正当」な判決が出るはずだ

 

というものだった。しかし、山口氏による伊藤さんへの逆告訴が不起訴処分となったことで、彼らは「地裁の裁判官がおかしかっただけ」というロジックを今後使えなくなってしまった

 

 

本来なら彼らは「地裁の時点では○○という新材料が提出されていなかったから山口さんは負けてしまったが、高裁ではそうはいかない」という主張をしたかっただろう。しかし、彼らが「地裁がおかしかっただけ」と主張せざるをえなかったのは、控訴審で山口氏が行っている新たな主張の中に、訴訟全体をひっくり返すような新材料が全くなかったからだ。

 

山口氏の繰り出した「新材料」は、せいぜいが串焼き店や鮨店の店員による「聴取書」くらいだ。しかし、両店ともに「山口氏の親の代からの行きつけの店」とのことで、中立な第三者とは言えない。したがって、裁判所が彼らの主張を採用するには証人として出廷し、伊藤さん側代理人による尋問を経る必要があるが、彼らの「聴取書」は過去の山口氏の主張と矛盾する点が多く、尋問に耐えられるものではないと思われる。

 

即ち、彼らの「地裁の裁判官がおかしかっただけで、高裁ではそうはいかない。虚偽告訴の訴えも書類送検されたので、今後は起訴されるだろう」という(願望込みの)主張は、苦し紛れの一時しのぎに過ぎなかったのだ。ちなみに、彼らの間ではなぜか「高裁では事実認定を最初からやり直される」ということになっているようなのだが、それもこれも山口氏が新たな材料を何も提示できないことの裏がえしだ。ちなみに当ブログとしては、同じ理由で高裁も伊藤さん勝訴の判断を維持するだろうと予想している。

 

 

「地裁単独異常説」を封印された彼らは、個人攻撃と尖鋭化の隘路へ

 

今回の不起訴によって彼らは「地裁の裁判官がおかしかっただけ」と主張することすらできなくなった。もはや万策尽きた彼らに残された道は、個人攻撃、個人情報晒ししかない。じっさい、不起訴報道後の彼らのツイートは、すでに個人攻撃や個人情報晒しが加速しているようだ。読む限りでは、彼らは裁判資料から得た個人情報を晒して盛り上がっているようで、本当に懲りない人達だと言うほかない。大多数の人びとは彼らの言論に賛同しないだろう。

 

既に、彼らの間では仲間割れ現象、いわゆる内ゲバや暴露合戦が起こっていたのだが、原因は彼らの言論が単なる個人攻撃に偏りすぎ、訴訟リスクを抱えていることを彼ら自身が認識していた事にあったようだ。従って、彼らの言論活動はさらに賛同者を減らしながら過激化・尖鋭化の一途をたどることが予想される。

 

 

伊藤さんは不当に優遇されているのか

 

彼らによる執拗な伊藤さんへの個人攻撃を見てみると、伊藤さんの過去の経歴や伊藤さんの成果物をやり玉にあげつつ「(本当は凡人に過ぎないのに)伊藤さんは不当に優遇されている」という形をとっているものが多いようだ。確かに、伊藤さんは一人の若手映像ジャーナリストとしては、突出したメディア露出を続けているのは事実だ。

 

ただ、これはわざわざ言うまでも無いことだが、伊藤さんが賞賛されているのは、伊藤さんが聖人だからでも、類い希なる天才ジャーナリストだからでもなく、自らリスクをとって(←ここが最も重要)被害を告発し、かつ自分の為だけでなく性犯罪被害者一般のために声を上げ、そして勝利したからだ。この文脈を理解できない彼らからすると、伊藤さんが不当な優遇を受けているように感じられるのだろう。むしろ、彼ら自身が個人攻撃を続ける事実こそが、伊藤さんがTIMEの100人に選ばれた理由を正当化していることにすら気づいていないようだ。

 

 

 

 

というわけで本日はここまで。今年は、日本のどこであっても、医療の供給体制が逼迫したまま年末年始を迎えます。持病のある方もない方も、みなさまどうぞご安全に、ご健康にお過ごしください。

 

 

 

追記1.

www.bengo4.com


弁護士ドットコムも「25日に不起訴」と報じており、東京地検が不起訴の決定を行ったのは間違いないようだ。なお、12月29日18時時点で、山口氏は本件について何のコメントも出していない。「検察の判断は不当だ」とか色々主張されたらよいのにと思う。

 

 

追記2.

youtu.be


弁護士さんによるyoutube解説動画。名誉毀損部分については検察審査会で判断が覆る可能性があるのではないかとの解説。確かに、虚偽告訴部分は相当無理があるので、相対的に名誉毀損部分の方が罪となりやすいだろうことは同意する。

 

伊藤さんは「睡眠薬を用いられた」と主張しているが、それは民事訴訟で認定されておらず、血液や尿からの検出も行われていないからこの部分は名誉毀損に当たる可能性がある、というのがこの弁護士さんの解説だ。

 

しかし、伊藤さんは、睡眠薬については使用を疑うが確証は得られていないと著書で明記しているし、山口氏が薬を使わなかったことが裁判で認定されたわけでもない。また、名誉毀損については山口氏は民事訴訟ですでに1億数千万円を請求する訴訟を起こしたものの、全額棄却されていることについて留意すべきだろう。

 

伊藤さんの著書は、いうまでもなく今回のような名誉毀損での反訴リスクを抱えたものだったが、今のところ伊藤さんは民事でも刑事でも山口氏の反訴を退けることができている。山口氏側に何らかの新材料がなければ、これらの判断が覆ることはないだろう。


追記3.

note.com



伊藤さんも不起訴になった山口さんを告発したのだから、伊藤さんは「不起訴」を軽視していてけしからん、という主張である。伊藤さんは我が国のルールに則って民事訴訟を提起したのであって、「不起訴を軽視」などしていないのだが・・・。