(2020/11/2 長すぎたので全体に簡略化しました。)
山口氏の控訴審における陳述書について検討します。
ざっくりいうと、
1.山口氏は、「伊藤さんは世間の耳目を集めるため、被害時刻を2時→5時に変化させ、内容も暴力的なものに変更した」と主張している。
2.自身が受けた取り調べが根拠だというが、hanada手記では「伊藤さんは朝まで記憶がないと言っている」とは
3.検察審査会への申立書(2017年5月提出)では、「5時」「身体の傷」について記載があり、山口氏に送ったメールには「身体の傷」の記載がある。普通に考えれば警察での聴取でもそのように主張しているだろう。
4.伊藤さんが世論を味方につけるために主張を変遷させたとしたら、真っ先にTシャツの件を省くだろう。
根拠は警察での山口さんへの聴取内容
山口氏は、「伊藤さんは世間の耳目を集めるため、被害時刻を2時→5時に変化させ、内容も暴力的なものに変更した」と主張しています。
伊藤氏が警察に対して「午前5時頃に意識が回復し、激しい犯罪被害を受けた」などと主張していなかった事は、警察や検察による私への事情聴取の内容からも明白です。 (控訴審陳述書より)
そして、聴取の内容を自ら語ったうえで、4回目の聴取では捜査員からこのように言われたといいます。
「これまでの3回の事情聴取を詳細に分析したが、 基本的に山口さんの供述には矛盾もブレもなかった。山口さんがウソをついていない ことは良く分かった。」と(控訴審陳述書より)
その上で、
伊藤氏の当初の主張をより正確に解明するために、私が警察で何を聞かれたかを詳述します。警察の資料と照合していただければ、私が真実を語っている事はすぐにわかると思います。(控訴審陳述書より)
と、自身の陳述と「警察の資料との照合」を求めました。山口氏、自身の主張に相当の自信がありそうですね。
山口氏hanada手記では「伊藤さんは朝まで記憶が無いと言っている」と・・・
しかし、山口氏のhanada手記には以下のような記載があります。
何回か聴取が繰り返されたあと、捜査員は私にこう言いました。
「あなたの供述は何度聞いても詳細で矛盾がない。他方、詩織さんは朝まで記憶がなかったと言っている。双方の主張は一見矛盾しているようだが、2人ともウソをついていない可能性が1つある。それは『ブラックアウト』だ」
【独占手記】私を訴えた伊藤詩織さんへ「前編」|山口敬之 | Hanadaプラス
伊藤さんの検察審査会での主張
また、伊藤さんは甲7号証として検察審査会への申立書(2017年5月29日付) を提出していますので、その内容を見てみましょう。閲覧いただいたEvTRiMCgさん、ありがとうございます。まだ閲覧報告のツイートはないのですが、ブログにアップして構わない旨、いただきましたのでご紹介いたします。
山口氏は控訴審陳述書で
そもそも、伊藤氏は警察に被害届を提出した当初は「午前2時か3時頃の準強姦」の被害を主張していたはずが、平成29年10月に本件著書を出版したころから「午前5時頃の強姦致傷」を強調するようになりました。
と述べ、2017年10月以降になって伊藤さんが「午前5時の強姦致傷」を言い立てはじめたと主張していました。しかし、検察審査会への申立書(2017年5月29日付) では、以下のように「被害時刻は5時」「出血」などの主張が見られます。
被疑事実の要旨
被疑者は、平成27年4月3日23時23分ころから同月4日5時頃の間、(ホテル名)233号室において、申立人が嘔吐するなどして体調不良により入眠していることに乗じてその着衣を脱がせて覆い被さるなどし、申立人が目覚めて抵抗するも押さえつけるなどして、もって姦淫したものである。
不起訴処分を不当とする理由
(略)
3.ホテルに連れて行かれるまでの経緯
(略)
そのような申立人にとって、被害当日の飲酒量は多いとはいえないものであったにも関わらず、記憶をなくすほどの状態に陥ったということは極めて異常なことであり、被疑者によって会食中に薬(デートレイプドラッグ)を密かに入れられた可能性も否定できないところではある。
4.ホテル内でのやりとり
申立人は、翌4月4日の早朝5時過ぎに、身体の痛みを感じて目を覚ましたところ、ベッドの上に全裸で仰向けになっており、被疑者が避妊具をつけずに申立人の身体の上にまたがっている状態であった。このため、申立人は被疑者を押しのけて、トイレに逃げ込んだ。その後、申立人はトイレから出て、客室から逃げようとしたものの、再び被疑者につかまり、ベッドに顔と身体を押さえつけられたが、なんとか抵抗して、再度姦淫されることは免れた。(略)
5.事件後の経過
自宅に戻った申立人が、自分の身体を確認したところ、乳首から血がにじんでおり、痛みのためにシャワーの水を直接当てることができなかった(略)
検察審査会での申立書には、デートレイプドラッグについての言及、被害時刻が午前5時であること、事件で身体に傷が残ったことなどの記載が見られます。普通に考えれば警察でも同様の訴えをしているでしょう。もしも、警察署では「被害時刻は2時、傷は残らなかった、ドラッグの可能性については言及していなかった」などの主張をしていれば、なんの注釈もなくこんな申立書を書くはずがないでしょう。ここで、伊藤さんを貶める派の人達の言い分を予想すると
伊藤さんは、検察審査会に不起訴相当の議決をさせて被害者ポジションを得るため、わざと供述調書と違う主張をした
くらいでしょうか。当方の予想を上回るアクロバティックな主張を期待しています。
訴状での主張は「準強姦・強姦未遂に相当する行為に対する損害賠償請求」
また、山口さん側からは、「伊藤さんは当初準強姦の被害を訴えていたのに、民事訴訟では強姦致傷の被害を訴えており主張が変遷している」という訴えもよく見られるのですが、訴状を見る限り、そのような法律構成にはなっていません。
第6 被告の不法行為責任
1 被告は、平成27年4月4日の午前5時ころ、原告が意識を失っているのに乗じて、避妊具もつけずに原告の下腹部に陰茎を挿入させる等の性行為を行ったのであり、かかる行為は、原告に対する故意による不法行為に該当し、被告は民法709条に基づく損害賠償責任を負う。2 さらに被告は、平成27年4月4日の午前5時ころ、原告が意識を取り戻し、性行為をやめるよう求めた後も、原告の体をおさえつける等して、性行為を続けようとしたのであり、かかる行為は、原告に対する故意による不法行為に該当し、被告は民法709条に基づく損害賠償責任を負う。
https://lisanha1234.hatenablog.com/entry/2020/08/25/220808
上記の1は「意識を失っているのに乗じて」「性行為を行なった」という準強姦行為。2は「原告が意識を取り戻し、性行為をやめるよう求めた後も」「体を押さえつけるなどして」「性行為を続けようとした」のですから、強姦未遂行為であったという主張ですね。
伊藤さんが主張を変遷させるとしたら・・・
最後になりますが、もしも伊藤さんが世論を味方につけるために途中で主張を変遷させていたのだとしたら、Tシャツの件も隠蔽できたのではないでしょうか。伊藤さんが山口さんのTシャツを着て帰ったことは、防犯カメラにも映りませんし、その後のメールのやりとりでも触れられていません。つまり、なんの証拠も残っていませんから、伊藤さんは知らぬ存ぜぬを貫き通すことも可能だったでしょう。民事訴訟においても山口さんは度々、Tシャツの件を同意ある性交の証拠として主張してきましたし、これは伊藤さんにとっても容易に想像ができることでしょう。しかし、伊藤さんはTシャツの件を著書ブラックボックスにおいて正直に記載しています。この辺をみても、伊藤さんが「世論を味方につけるための主張変遷」を行ったとは考えづらいところです。