伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

Japan's Secret Shame 和訳書き起こしの紹介

sblackbox.wordpress.com

 

↑このサイトで、「Japan's secret shame」の和訳書き起こしが行われているので紹介する。

始めに申し上げるが、このエントリでは全ての内容ではなく一部を抜き出して紹介するので「都合のいいキリトリだ」みたいな事を言いたい人はどうぞ、元サイトを参照してほしい。

 

まず、番組冒頭で、彼我の強姦罪認知件数の比較が紹介される。

強姦罪の認知件数」

「英国は人口100万人に対し510人」

「日本は口100万人に対し10人」

 

「日本より英国の方が性犯罪の件数が多いのに、イギリスにそんなこと言われたくない」みたいな反応を示す人が多いのだが、認知件数の比較について番組冒頭でしっかり行われている。

 

 

ナレーター: (訳) 英国におけるレイプの申立ては日本の50倍以上。この数字をもっていかに日本が女性にとって安全な国かと主張する人もいる。しかし活動家によれば、それは女性たちが届け出るのを怖がっているからだと言う。世界で最も進んだ国の一つであるにもかかわらず、日本の強姦法は1907年に遡り、百年以上改正されることはなかった。

 

いわゆる「暗数」問題だけで認知件数の差が説明できるとは筆者も思わないが、単純に英国の方が日本より50倍危険だと言えるかはまた別の問題だろう。

 

その後、山口氏と伊藤氏の出会いから事件までの流れが簡単に解説された後、日本における「レイプ神話」問題が語られる。

 

 

リッチ素子 (ニューヨーク・タイムズ東京支局長): (訳) この国ではレイプとは何かということについて普通でない定義付けがあります。いまだに、見知らぬ人が襲ってきて抵抗して傷つけられたりしない限り犯罪にはならないという感覚。お互い顔見知りの間での出来事であればとうていレイプではないと。そしてお酒を飲んでいたら、それもまたレイプではないと。

 

ナレーター: (訳) 日本の法律によると、強姦を証明するには、強制もしくは脅迫された証拠を示す必要があります

 

後藤弘子 (千葉大学法科大学院教授): 例えば裁判官が期待するようなリアクション、例えば押さえつけたらヤダっていうふうにバタバタするとか、あとはこう一生懸命こう相手を押し返すとか。で、助けを呼ばなければ、それは同意があったんだ…。

ナレーター: (訳) 多くの被害者は襲われた時に恐怖で身体が凍り付いてしまうことは調査で示されている。

後藤弘子 (千葉大学法科大学院教授): あまりにびっくりして助けを呼ぶこともできない。その現実がまったく反映されていないわけです。

 

 英国では強姦罪の司法判断において「レイプ神話」「凍り付き現象」などについて、少なくとも日本よりは考慮が行われているということなのだろう。

 

 

その後、山口氏が伊藤氏を笑いものにする動画をはさみつつ、事件の核心部分が解説された後、「日本の伝統的な男女の役割」についての議論として、以下の解説が行われる。

 

リッチ素子 (ニューヨーク・タイムズ東京支局長): (訳) 男性が女性を物として見ることがOKだという感覚が文化的にもあります。ごく最近になってやっと、コンビニエンスストアで特定のポルノ雑誌が目に入らないように陳列されるようになったのです。家族が牛乳や卵、新聞などを買いに行くお店の棚に陳列されていたわけですよ。中にはレイプの幻想を含んだものもありました。そういったものから性教育を受ける男性もいるわけです。

 

・・・まぁ、西欧や米国だとポルノ雑誌のゾーニングが綺麗に行われているというわけでもないのだが、日本のポルノ雑誌は独特のどぎつさがあるとは感じる。

 

ジェイク・エーデルスタイン (犯罪ジャーナリスト): (訳) 女性は抵抗し男性は強要する。そして女性も気に入ってくれた、というのが日本のエロ本の共通のモチーフなんです。

 

...わかる。この辺は、男性の支配欲との関連があるかもしれませんね。

 

後藤弘子 (千葉大学法科大学院教授): だからNOと言ったら、それはNOなんだっていうそういう考え方が、アメリカでもイギリスでも一般的だと思います。だけど日本だとですね、No means YES。嫌かどうかで自分の意見を表明すること自体が女らしくないと。女性は自分からこうしたいというふうに言うことがいいことではないというふうにずっと小さい時から教えられてきているんだと思うんですね。女性としてあるべき姿ではないと考えられているので。

 

この辺の議論から、「いやよいやよも好きのうち」という言い回しを思い浮かべる人も多いだろう。

 

 

 

また場面が転換し、次は東京の性暴力相談NPOの脆弱な体制について。事件直後に伊藤さんが電話をかけたNPOを訪れる場面。

 

ナレーター: (訳) 詩織さんは東京郊外にあるレイプクライシスセンターに電話した。しかし直接会って面接しないとアドバイスはしてあげられないと電話口での対応を拒否された。

 

ナレーター: (訳) レイプクライシスセンターは、1年に6千件の電話を受けている。しかしそのうち100人ほどしか面接に現れない。 

 

伊藤詩織: 「どういった病院に行っていいのか、その情報だけでもいただけませんか。」っていうお電話をしたんですね。そういったお電話をしたところ、「まず面接に来ていただかなかいと情報提供はできません。」と伺っていて

平川和子: それはごめんなさい、っていうことなんですけれども。あの当時は、一人体制だったっていうこととか、いま二人体制だから、一人が出ておうちの近くまで行って、それからそこでタクシーに乗って病院の方にっていうようなことはしたことはありますけれども。詩織さんから聞かれている質問があるときには現状を答えているので、それも驚いていらっしゃるんだと思うんですが、現状はこうなんですね。貧しい状況ですよね。はい。

伊藤さんの著書では、伊藤さんが被害にあった後に「性暴力相談NPO」に電話をかけて相談するも「直接来所してもらわないと一切相談に応じられない」という対応をされてしまい何ら情報を得られなかった、という描写がある。当該NPOの方がそのことについて伊藤さんに謝罪しているようだ。

 

 

次に、話は伊藤さんが警察で受けた理不尽へと移る。

 

「日本の警察官数 259,500」

「女性警察官の割合 8%」

 

ジェイク・エーデルスタイン (犯罪ジャーナリスト): (訳) 警察官は圧倒的に男性です。このような事件を捜査するのが全員男性だとすると、性的暴力とは何か、性的同意とは何かといったことについて後退的な考えになり、そうなると苦労しますよ。

 

 

伊藤詩織: (訳) 高輪署の最上階は体育館のようになっていて、たしか捜査官が3人いました。全員男性でした。私は床にひかれた柔らかい青いマットレスの上に横たわりました。すると等身大人形を持ってきて私の上に乗せ、それを動かし始めたのです。そしてこんな風でしたか、あんな風でしたか、と訊いては写真を撮っていました。閃光のような記憶に眩暈がして気分が悪くなり、私は起こっていることを考えないように心をシャットダウンしました。

ナレーター: (訳) 人形を使った暴力犯罪の再現は日本の警察が一般的に用いる手法である。活動家は女性に心の痛手を負わせるものだとして批判している。セカンドレイプだとも言われている。

 

 

逮捕状の発行と不執行、書類送検後不起訴となった後、伊藤さんは被害を公表することを決意。

 

伊藤詩織: (訳) 正直に言うと、私の心の一部では、この事件のことは忘れたほうがいいんじゃないかと思ったこともあります。それが女性としての生き方なのかなと。でもそんな風に思う自分が本当に嫌なのです。それは間違っている。だって私は何も悪いことはしていないではないかという気持ちでした。

ナレーター: (訳) この決断をうまくアピールできるよう、詩織さんは自分で調査を行う必要性を感じた。これには実に9ヶ月もかかった。

 

 

テレビ 女性キャスター: 決意の会見に臨んだ28歳の女性。はっきりとした言葉で自身の経験を語った 。

テレビ 女性キャスター: 伊藤詩織さん。望まない性行為をされたとして、なぜ実名で語ったのでしょうか。

伊藤詩織(記者会見): レイプがどれだけ恐ろしく、その後の人生に大きな影響を与えるか、伝えなくてはいけないと思いました。このことは誰にでも起こり得ることです。

伊藤詩織: (訳) できることはすべてやったという感じです。公表に踏み切ったのは、私に残された唯一の選択でした。

伊藤詩織(記者会見): このまま沈黙し、法律や捜査のシステムを変えないのであれば、私たちは皆、この犯罪を許しているのと同じではないでしょうか。

 

湧き上がった激しいバッシング。

 

くつざわ亮治: 自称海外で活動するジャーナリスト、●●詩織さん。2015年4月に強姦されましたーーーというような衝撃の記者会見です。で、まさしく怪しいんだなぁ、これが。とですね、あの性犯罪の被害者が顔出しテレビって異例だって。顔出しテレビ出演って、日本人はね、あの隠したがりますよ。

 

伊藤詩織: (訳) (ウェブサイトに書かれたコメントを見ながら) “Bitch” “彼女はいつも枕営業してるんだよ” “彼女は売春婦に違いない” “韓国へ帰れ”

伊藤詩織: (訳) あぁ、私の家族の写真がある。“特異な目付きの詩織のお父さん。” 彼らは私を、そして家族をターゲットにしている。妹は顔をネット上に晒されるべきじゃない。ここに登録していないのに。妹にこんな辛い思いをさせたくない。誰にもさせたくない。

 

はすみとしこ (レイシスト漫画家) : あの、そういう美しい女性が枕営業を失敗した、という絵を描いたんですけれども、そういう女性の被害に皆さん遭ってはいけませんよっていう意味を込めて。 (ここで大笑いする杉田水脈 自民党衆議院議員)

杉田水脈 (自民党衆議院議員) : 絶句!!!

 

杉田氏はこの映像について「キリトリされたものだ」という主張をしているが、動画全体を見てみるともっとひどいということは別のエントリですでに述べた。

 

greenbox2020.hatenablog.com

 

 

杉田水脈 (自民党衆議院議員) : 彼女の場合は明らかに、女としても落ち度がありますよね? 男性の前でそれだけ飲んで、記憶をなくしてっていうような形で。社会に出て来て、女性として働いているのであれば、それは嫌な人から声をかけられますし、それをきっちり断ったりとかするのもそれもスキルのうちですし。

インタビュアー: (訳) いままで差別やハラスメントを経験したことがありますか?

杉田水脈 (自民党衆議院議員) : はい。それはもう社会に生きていたら山ほどありますよ。ふふふ~(笑)。でもまぁ、それはそういうものかなと思って。

 

国会での追及。

 

柚木道義 (国民民主党衆議院議員) : しかも捜査員が現場まで逮捕に行っているんです。その日にですよ、執行停止命令が出た。有名人、著名人の場合にということで、まさにそういう場合は揉み消されるのかっていうのが一つこの事件の論点で一般の方は許されないと思うんですよ。

警視庁: この事件を経過等を踏まえまして、私共としては追加捜査をするということは考えていないということでございます。

 

政治的な取り上げ方をされるにつれ、伊藤さんの不安が増す。

 

伊藤詩織: (訳) 公表した後、安全でないと感じていました。脅かされるのは私だけではなく、私の家族も友人も。被害妄想と恐怖で本当に怖かったです。権力がある人はやりたい放題。私は… 私は何者でもないんです。

 

ドンキ?で買った盗聴器発見器を使うシーン。たぶんこれは、実際にモノが仕掛けられていたわけではないと思うが。

 

友人: 探吉くん? 探吉くんは屋内に仕掛けられた盗聴機器…

伊藤詩織: カメラもわかるんだ。

伊藤詩織: 何これ。なんか… おもちゃだよ。ほんとにこれで見つかるの?

友人: ちょっと頼みますよ。探吉くん。

伊藤詩織: レベル2、または3の反応があれば要注意です。

 

(ピーピーピーピーピー)

伊藤詩織: やっぱりここが鳴る。2、3 だよ。

友人: ここで?

伊藤詩織: 怖い

友人: 絶対何かあるでしょう。ここは。どうやって壁の中に…。

 

2017年9月、検察審査会が不起訴相当の決定を下した場面に続き、山口氏が乾杯をする場面が流れる。

 

上念司: おめでたく日の目を見られるようになった山口さんのおめでとう会でもございますので、もう一回お願いします。(拍手)

ナレーター: (訳) 山口氏はジャーナリスとして仕事を再開すると発表した。

山口敬之: 知らない方がいたら、ネットなど検索しないでおいていただければ。(笑いを誘う)

リッチ素子 (ニューヨーク・タイムズ東京支局長): (訳) 彼は決して逮捕されることも起訴されることもありませんでした。公正な立場で言うならば、その点を指摘しなければなりません。彼は決して逮捕されることも起訴されることもなかったと。刑事司法制度に関して言えば、彼の事件は存在しないのです。

杉田水脈 (自民党衆議院議員) : 男性の方は悪くないと、犯罪ではないという司法裁判が下っているわけです。そこを疑うってことは日本の司法に対する侮辱だと思います。日本の警察、世界で一番優秀です。伊藤詩織さんがああいう記者会見を行って、ああいう嘘の主張をしたがためにですね、山口さんや山口さんの家族には「死ね」とかって言うような誹謗中傷のメールとか電話とかが殺到したわけですよ。だから私はこういうのは、男性側の方が、私は本当にひどい被害を被っているんじゃないかなというふうに思ってます。

 

次に、話題の「everyone」のシーン。

 

 

ナレーター: (訳) 上告が棄却されて3ヶ月。伊藤詩織さんは性暴力問題に関する活動家になった。

 

ナレーター: (訳) 彼女は東京の上智大学の授業に話し手として招かれた。

伊藤詩織: はじめまして。よろしくお願いいたします。

伊藤詩織: 受けたことってありますか? 「合意」についての教育。

伊藤詩織: (静まり返った教室を見渡して) ない。ただ実は、いまの日本の法律は「合意」というところまでも話は進んでいないですね。

 

性行為の同意、合意ということや、性的な被害に遭ったときや被害を見聞きした時にそのことについて声を上げられるか、というテーマで語ったようだ。

 

 

 

伊藤詩織: 楽しいトピックでもないし、特に日本の社会ってタブーなことだから、すごく聞いてても苦しいと思うし…

伊藤詩織: (訳) 日本社会で育ったなら、誰もが性的暴力や性暴行を受けています。でも誰もがそれがそうだと認識しているわけではありません。特に高校生になって公共交通機関に乗るようになると、毎日のように起こることなので、クラスルームに着くといつも話題はそれです。今日こんな男が私を使って自慰してたとか、私のスカートを掴んだとか。こういったことは私たちが自分で折り合いをつけていかなければならない問題なんです。決して被害届など出さないのです。

女子生徒1: 私は中・高、女子高だったんですね。それで制服もセーラー服でかわいいし、誰かが被害を受けてても自分が受けてても女子高生だし仕方ないよねみたいな。

男子生徒: 修学旅行の時に、女友だちが目の前で痴漢されちゃって、それを男の自分でも見てて「止めてください」っていうのを叫べなかったし、どうにもならないことなんじゃないかって、そういうことをほんとに考えて。

伊藤詩織: 被害を受けた時に、サークルであっても、それを大学の中で、サークルの中で言えますか?

女子生徒2: 自分を否定せずに話を聞いてくれる人を見つけるっていうことがすごく難しいなって思いました。

出口真紀子 (上智大学准教授): (訳) 私が学生に尋ねた質問の1つは、レイプされた人を知っているかという質問でした。クラスの22人の学生が「はい」と答えたのです。 これは単に電車での痴漢行為とかいう問題ではなくレイプなのです。そこで私が疑問に思ったのは、被害を受けた人のうち一体何人が実際に一歩を踏み出して関連機関に相談したのかということです。女性たちはその一歩を踏み出していないのです。この問題はいまだ水面下にあるままだと言えます。

 

というわけで、件の「everyone」発言は、「性暴力被害に遭ったときに、きちんと言い出せる世の中を作る」ための活動を紹介する中で行われたもの。話の力点としては、「被害に遭っても被害だと認識しなかったり、言い出せない女性が多い」という所に置かれている。まぁ遍く全ての女性がそうだということはないだろうから、「不正確だ」という指摘はしようと思えばできるとは思うが、あまり意味のある指摘ではないように思う。それで、意味を持たせようとして「日本人全体に対するヘイトだ」「日本女性を危険にさらす発言だ」みたいな批判を考えついたのだろう。

 

 

  その後、番組は性犯罪被害者の方と伊藤さんが話をするシーン、伊藤さんが内閣府の担当者と話をするシーン、2017年12月の第一回口頭弁論を経て、伊藤さんのこの発言で締めとなる。

 

伊藤詩織: (訳) 変化を感じます。そういったことはすべて人から始めなければならないことなんです。行動を起こせば必ず波が立つでしょう。それは確かです。私は良い意味でも悪い意味でも同時に両方の経験しましたが…  黙っているよりいいです。