このエントリでは、2020年11月28日時点の情報に基づいて、控訴審の進行状況について解説します。
一審の経緯
2017年9月28日
伊藤さんから1100万円の損害賠償を求める訴訟を提起
2019年2月
山口氏から名誉毀損で反訴 1億3000万円を請求
請求の根拠として源泉徴収票を証拠提出しているが、閲覧制限のため内容は不詳。
2019年12月18日
一審判決
被告に330万円の支払いを命じ、被告の訴えは棄却。
2020年1月6日 山口氏により控訴
山口氏、この頃一審の代理人を解任。
2020年2月23日 山口氏、産婦人科医院とのメールを証拠提出
これですね。
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年8月26日
『面談の願い』控訴人代理人
『回答メール』イーク表参道
「患者様本人の同意を得ずに医療内容について、第三者に話をすること自体は問題にならないのでしょうか?」#民事訴訟 #控訴審 #詩織さん #山口敬之 https://t.co/DYnADTkx2E pic.twitter.com/qnz4pEZNZ2
産婦人科医院は、性行為の時間を午前2時と伊藤さんが申告したとカルテに記載しており、これは山口氏の主張を支持する内容です。
地裁判決では、そのカルテ記載は誤りであると判断されました。「避妊具を用いたが破れた」という明らかに事実と異なる記載があること、伊藤さんが医師に詳細を語るのに抵抗を感じていた可能性もあることなどから、「不正確な記述が行われた疑念を払拭できない」とされました。
山口氏はこのカルテ記載を自身の主張(伊藤さんとの性行為は午前2時頃で、その頃伊藤さんはしっかりと意識があった)の根拠としていたので、控訴審では産婦人科医院の医師を証人として申請しています。
2020年2月25日 山口氏、控訴理由書提出
【閲覧報告】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年3月7日
「控訴理由書」
目次①#OpenTheBlackBox #控訴審 #詩織さん #山口敬之 pic.twitter.com/z9KPowtokG
目次を読むと、山口氏側が事件のほぼ全てにわたって主張のやり直しをしている様子が伝わります。
2020年3月19日 山口氏、串焼き屋・鮨店の聴取書を提出
【閲覧報告】(訂正)
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年8月21日
「聴取書『とよかつ』」2020年3月19日
時機に遅れた(本来は第一審で陳述書として提出するもの)聴取書を提出してきたが突っ込みどころ満載である。
まず利害関係者で陳述書ではない(証人尋問の対象になり得ない)ので証拠力は極めて低い。
これから順番に指摘していきたい。 pic.twitter.com/i6ag7EGWvA
【閲覧報告】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年8月21日
「聴取書『鮨の喜一』」2020年3月19日
時機に遅れた(本来は第一審で陳述書として提出するもの)聴取書なるものを提出してきたが突っ込みどころ満載である。
まず利害関係者で陳述書ではない(証人尋問の対象になり得ない)ので証拠力は極めて低い。
これから順番に指摘していきたい。 pic.twitter.com/9Ea4EolB6n
山口氏は、両店舗からの「聴取書」を証拠として提出。
山口氏に有利な点として、「伊藤さんが串焼き屋で山口さんに身体を寄せていた」「伊藤さんが鮨屋でトイレから出てきてから、山口さんは帰りたそうにしていたこと」 という証言があること。
しかし、この聴取書には、問題点がけっこうあります。
1.両店ともに「山口氏の親の代からの行きつけの店」とのことで中立とは言いづらい
2.そのため、裁判所が主張を容れるためには証人とて法廷に立つ事が求められる
3.山口氏の主張と相反する部分が散見される
4.一審でも提出できたはずなのになぜ今提出したのか
以上の理由から、裁判所がこの書面を重要視することはあまりないように思います。
2020年4月15日 伊藤さん側、控訴答弁書を提出
伊藤さん側も、山口さんの主張に全体にわたって反論を展開しています。
2020年6月28日 山口氏、陳述書を提出
【閲覧報告】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年8月28日
「控訴人陳述書」(2020年6月28日)
控訴審で陳述書を提出するなら自分が第一審で提出した2つの陳述書並びに反対尋問で供述した内容をきちんと確認しないと整合性が取れてない箇所が多すぎますよ!
注)6、については省略#民事訴訟控訴審 #詩織さん #山口敬之 pic.twitter.com/tTkWgxThus
山口氏、あらたな「陳述書」を提出。小林氏が指摘するように、一審での主張や、控訴理由書と矛盾する主張が一部に見られます。最大の変更点として、性行為にいたる直前部分の描写として、一審では「なだめるような気持ちで性行為に応じた」としていたのですが、「伊藤さんが積極的に身体に触れてきたため」と主張を転換。これまでその主張をしなかった理由として「未婚女性である伊藤さんに配慮したため」としているが・・・。
2020年7月10日 伊藤氏により、さらなる損害賠償を求めた付帯控訴を提起
【閲覧報告】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年8月7日
「附帯控訴状」(令和2年7月10日)#東京高裁控訴審 #詩織さん #山口敬之 pic.twitter.com/622HklzZsw
伊藤さん側も、控訴審で損害賠償額の上積みを図るようです。添付画像を読むと、伊藤さんが被った精神的負荷をもっと考慮に入れるべきだ、というのが主張の骨子のよう。
伊藤さん側の村田弁護士は、当日にあった支援者らへの報告集会で「330万円という金額は、私は低いかなと率直に思います」と言った。「しかし」と続ける。
「今の日本の裁判の相場では、決して低いわけではない金額です。日本の裁判の慰謝料の相場が低いという問題はあるんですが、逆に言うと日本の裁判所から見て相当だと思われる慰謝料はしっかり取れた」
300万円の慰謝料の10%が弁護士費用として認められる。そのため、合わせて330万円になった。これも「通常のこと」だという。
「だから、330万円という金額は、決して高い金額ではないけれど、恥ずかしい金額ではない。立派な金額だと思っています」
2020年8月15日 山口氏、酩酊度合いに関する医師意見書を提出
【山口氏供述の変遷】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年10月13日
「『とよかつ』での滞在時間」
この表からも一目瞭然であるが高裁に直近で提出してきた「手塚意見書」なるものは「控訴理由書」とも「聴取書」とも違ってるし物理的に不可能な来店時間である。
※ホテル解錠記録は退室ではなく入室時間であることも理解しているとは思えない。 pic.twitter.com/P862T9K5cu
なぜ山口氏は控訴審で伊藤さんの飲酒量を引き下げているのか
もともと、山口氏が一審で大量飲酒説を唱えていたのは、「レイプドラッグ使用」を打ち消すのが目的だったのでしょう。「伊藤さんはこんなに大量に飲酒したのだから酔っ払ったのであって、私はヅラッグなど使っていない」ということです。しかし、伊藤さん側は、一審でドラッグ使用については殆ど主張せず、地裁判決はドラッグ使用については認定しませんでした。また、判決では「伊藤さんが午前2時に酩酊から覚醒したとは考えづらい」という判断もなされました。
2020年9月7日 第1回弁論準備手続
今後の訴訟の進行について、原告側、被告側、裁判所側で話し合いがもたれたもの。内容は以下のツイートで報告されています。
裁判官から原告・被告双方に対してそれぞれの主張を整理することを求めています。また、山口氏側の代理人は、「午前2時頃の行為を前提として主張」とありますから、つまり地裁判決をまるっと覆したいということのようです。
2020年9月25日 小林vs山口訴訟 口頭弁論
このブログによれば、小林よしのり氏vs山口敬之氏の訴訟で、山口氏側代理人が伊藤氏との訴訟の進行について以下のように発言したといいます。
大西弁護士(引用者注:山口氏代理人):不法行為の内容の特定から高裁の方から訴訟指揮がされている。請求原因の事実レベルの特定からやり直すという進行になっている。
よしりん側:控訴審については、A女さん(引用者注:伊藤詩織さんのこと)側にはお話聞いていまして、争点整理されてるとは聞いていますが、不法行為のやり直しをするとのニュアンスは聞いていませんで、不法行為の内容をもう少し特定すると方向だと...裁判所から話を受けて... (聞き取れず)
大西弁護士:期間的には〜中略、通常の高裁の審理よりはだいぶ、時間をとって進めると、裁判体(2)から双方に伝えられています。
控訴審の方では、当方は同じ原告から新たな証人尋問等の申請もしていて、それの採否についても争点整理の結果を踏まえて判断する。
上記、いずれも強調は引用者によります。上田24氏の報告では、山口氏代理人曰く伊藤さんvs山口さんの訴訟の控訴審では「不法行為の内容の特定のやり直しをする」 という方針になっているそうです。また、新たな証人尋問の申請もしているとのこと。一方、伊藤さん側代理人は「不法行為の内容についてさらに特定する」方針であるとのこと。
山口氏の代理人が語った内容は、9月7日の弁論準備手続を受けてのものでしょうが、先ほど取りあげた、小林章さんがアップした資料からは、山口氏の代理人が「やり直しをしたい」と考えているのは読み取れますが、裁判所がそれを受けれているかどうかはわかりません。
山口氏を応援する立場の人達は、↓のように大変盛り上がっているようですが、まずはもう少し落ち着いて推移を見守るのがよいでしょう。
2020年11月12日 第2回弁論準備手続
【閲覧報告】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2020年11月26日
「第2回弁論準備手続調書」
当事者の陳述等
控訴人(附帯被控訴人)
被控訴人(附帯控訴人)の第1準備書面補充書及び第2
準備書面に対する認否反論の書面を、令和3年1月15日
までに提出する。
次回期日:令和3年1月25日#民事訴訟控訴審 #詩織さん #山口敬之
さて、小林さんが閲覧してこられたのでご報告。かなりあっさりとした記載です。山口氏側に対して、伊藤さん側からの書面(おそらく、慰謝料増額要求?)に対する反論を準備するよう求めています。また、山口氏側が行ったという証人申請などについても特段記載がないようです。
次の期日は1月25日、再度弁論準備手続とのことです。何か動きがあり次第、また報告のエントリをアップします。