伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

山口氏の控訴審陳述書を検討する③午前5時頃の出来事、吐瀉物、ジャーナリストという職業、山口氏の受けた被害

*コメント欄にいただいた情報を元に更新を行いました。更新部分には下線を施しています。(2020/9/27 18:51)

 

さて、引き続き山口氏の控訴審における陳述書について検討を加えます。

 

午前5時頃の出来事について

 山口氏の主張は色々ありますが、他の証拠とリンクさせて語る部分だけ取り上げます。

ホテルに入ったときと、出て行くときとで、伊藤氏のヘアスタイルが変わっていることは防犯カメラの映像からも明らかです。ホテルを出る前にしっかりと髪を整えたのです。原判決のように、午前5時頃強姦致傷の被害に遭い、逃げるようにホテルの部屋から退出したとするのであれば、伊藤氏は、いつ自分のヘア・スタイルを整えたというのでしょうか。

 髪をまとめるくらいヘアゴムさえあれば数秒でできますし、伊藤さんの著書によれば、「行為」が終わった後の山口氏は引き続き襲ってくるような気配はなかった訳ですから、伊藤さんの説明にとくに矛盾はありません。

 その他、Tシャツや4月6日の伊藤さんからのメール等の主張がありますが、いずれも、すでに地裁判決で否定された主張です。

 

 

 


5.吐瀉物について

 

「伊藤氏が自らかなり早いスピードで飲酒をした」と女将は証言していない

2軒の飲食店の店主や店員も、(中略)「伊藤氏が自らかなり早いスピードで飲酒をした事」を異口同音に、かつ明確に証言しています。

冒頭で山口氏はこのように主張しますが、これは事実と異なります。

 

 

女将さんは「伊藤さんの飲酒量はワイン2杯。他に何を飲んだかは覚えていない」「2人が当店に滞在したのはだいたい2時間弱」。これでは、「かなり早いスピード」とは到底言えません。

 

伊藤さんはタクシーで嘔吐した事実を著書で紹介している

次に山口氏はこのように主張しています。

まともな大人の女性にあるまじき失態を認めたくないと恥じたのか、「自分が大して酒を飲んでいないのに意識を失ったのは薬物を盛られたからだ」という全く根拠のない主張を、法廷の外で繰り返しています。この主張を補強する意図があってか、伊藤氏は基本的に「あの夜自分は吐いていない」という立場を法廷内外で強調しています。これは、伊藤氏のいうデートレイプドラッグなる薬物が、女性に飲ませると嘔吐することなく即座に意識を失うという特徴を持っているからだと思われます。

(太字はブログ主による)

 

伊藤さんは、著書ブラックボックスの中で、タクシー運転手の証言を紹介する形で、嘔吐した事実を記載しています。

 

二人が降りた後、車を出してしばらくして、いわゆるゲロの匂いとも違う、酢と洋酒が混ざったような匂いがした。やられた、と思って後部座席を確認すると、女性が座っていた奥側の席の下に、消化されていない食べ物がそのまま吐かれていた。

 

 

 

 

7.ジャーナリストという職業に対する原判決の無知と無理解について

山口氏は、

「当時、被告はTBSから出社に及ばずとの通知を受けていたのであるから、米国の政治的動向を確認することが職務上必須であったとも認めがたい」

と判断した地裁判決について、

確かに、私は当時TBSの社員でありましたが、TBSの社員であると同時に、ジャーナリストです。(中略)ジャーナリストという職業の本質や、私の職業に向かう姿勢を全く無視し、一方的に「米国の政治の動向を確認することが職務上必須であったとも認めがたい」と断じた原判決は、それぞれの職業に対する敬意も洞察も研究もなく、浅はかな先入観によって私の職業と私自身を冒涜した許しがたい判決です。

と述べ、厳しく批判しています。そして、4月3日がいかに米国政治を考える上で重要な一日であったかを次のように述べました。

 

2015年4月3日:イラン核合意についてのオバマ演説

伊藤氏と会食した4月3日は、イランと欧米各国が核問題で枠組み合意に達し、当時のオバマ大統領が「歴史的な和合だ」とする記者会見を行った日だったのです。(中略)私にとっても、何年に一度という大ニュースです。(中略)伊藤氏の会食中も、オバマ大統領がどのような発言をするのか、ニュースが気になって仕方がなかったのです。(中略)伊藤氏が酔っ払ってしまったのが日本時間の夜10時半頃で、それはアメリ東海岸時間の午前9時半、まさにアメリカの政治が一斉に動き出す時間だったからなのです。(中略)アメリカと国際政治に携わる人間にとっては、だらしない酩酊者の面倒を見て浪費するにはあまりに惜しい時間だったのです。

4月2日、スイス・ローザンヌで米欧など六カ国とイランとの間で核問題について合意が得られました。

ローザンヌ=久門武史】米欧など6カ国とイランは2日夜(日本時間3日未明)、イラン核問題の包括的解決に向けた枠組みで合意した。

イラン核問題で枠組み合意 核兵器製造、10年以上制限 :日本経済新聞

  

www.youtube.com

↑これはオバマ会見を生中継するABCニュースの動画です。

Statement by the President on the Framework to Prevent Iran from Obtaining a Nuclear Weapon | whitehouse.gov

↑4月2日米国東海岸夏時間の午後2時25分。従って、日本時間の4月3日午前3時25分ころです。また、会見そのものは概ね20分程度行われました。

 

 

 

4月3日の山口氏の行動

それでは、同日の山口氏の行動はどのようなものであったか。2018年11月12日に提出された被告陳述書からは以下のように読み取れます。

 

  

 

日本時間 米国東海岸時間 山口氏の行動 
午前1時29分 午後0時29分 伊藤氏に集合時間を尋ねるメールを送信し寝る
午前3時25分 午後2時25分 オバマ演説開始(20分ほど)
午前4時25分 午後3時25分 伊藤氏からメール返信あり
午前8時頃? 午後7時頃 伊藤氏からのメールを確認し、鮨屋を予約
深夜 TBSで聴取を受ける
午後6時 午前5時 恵比寿に到着、時間つぶしをするため串焼き屋に移動
午後7時 午前6時 伊藤さんと合流
午後8時 午前7時 鮨屋へ移動
午後11時 午前10時 伊藤さんとホテルへ移動

 

下手くそなExcelで申し訳ありません・・・。

さて、まず山口さんの「被告陳述書」では、オバマ演説が行われた未明頃、オバマ演説については全く触れられていません。せっかく起きていたのに、伊藤さんにメールを送って眠ってしまった。そして、朝起きてもニュースチェックはしなかったようです。

 

 

そして、TBSでの聴取が終わった段階で、すでに米国東海岸は深夜ですから、国務省国防総省も大きな動きはしないでしょう。ワシントン支局員からの報告を確認できたはずです。しかしながら、山口さんは被告陳述書(2)でこのように述べていました。

同日、私は、予定のスケジュールをこなした後、恵比寿に向かいましたが、思ったよりも早く、午後6時頃に到着しました。そこで、伊藤氏が恵比寿に来るまでの間、時間つぶしをしようと思って、恵比寿西にある行きつけの串焼き店に入りました。

 

 

山口氏は、今回の控訴審陳述書で「伊藤氏との会食中も、オバマ大統領がどのような発言をするのか、ニュースが気になって仕方がなかった」と述べていました。しかし、実際にはオバマ会見は伊藤氏との会食中どころか未明には視聴可能な状態でした。また、2018年11月2日に提出した陳述書では

約15分の時間をかけて、ホワイトハウスアメリ国務省、および国防総省に配置されている支局員からのメールなどのチェックをしております。

小林 章 on Twitter: "【閲覧報告】
「被告陳述書(1)」② 一部抜粋

#metoo民事訴訟… "

と、これらの業務は15分程度で終わるものだったと述べていますから、1時間程度の時間が空いていたのならホテルに戻ってニュースの確認をしていればよかったのです。「時間つぶしをしようと串焼き店に入った」というのは、「ニュースが気になって仕方なかった」人の行動とは思えません。

 

 

 

山口氏による「自省」

山口氏は、「8.私のうけた甚大な被害とその救済について」という部分で以下のように語り、「自省」しているのですがいずれも当てつけがましいと言うほかありません。ここでは、山口さんの主張が真実であったとして、「助言」をしていきます。

 

支局での就職を希望している人物とは一対一で会食すべきではなかったのではないか

一対一についてもそうですが、場所は会社の会議室なり喫茶店などを使えばよかったのでは。

伊藤氏は自分で勝手に飲んで酔い潰れてしまったのだから、寿司店に置いて帰れば何の問題も起きなかったのではないか

寿司店に迷惑をかけまいとの思いを強調しています。ただ、「今から鮨屋に移動するが、今夜はオバマ会見の事が気になっているので、22時までにはおひらきにしたい」などと最初に言っていれば伊藤さんが酔い潰れることもなかったのではないでしょうか。

伊藤氏を一人でタクシーに乗せて運転手に現金を渡して送り届けてもらえばよかったのではないか。

伊藤さんは恵比寿からほど近い原宿に住んでいたとのことだから、ホテルに向かう途中で家に送り届ければ料金はほとんど変わらず、タクシーの運転手にも迷惑はかかりません。伊藤さんに「家はどこだったっけ?」と一言聞けばよかっただけの話です。

山口さんは、履歴書に神奈川県の住所があったと主張していますが、伊藤さんは一件目の串焼き屋で「シャワーを浴びて来た」と言っていたのだから、家が神奈川県方面だと思ったという話には若干無理があります。

 

いくら自力では帰れなさそうな酩酊度合いであったとしても、私の逗留先のホテルで休ませるという選択は、適切ではなかったのではないか

百歩譲ってホテルに連れてきてしまったとして、ドアマンに助けを求めたら良かったのではないでしょうか。ホテルには宴会機能がありますから、泥酔者の扱いには慣れているでしょう。別室でしばらく休ませるなどの措置をとってくれたかもしれません。部屋でゲロを吐かれることもなかったでしょう。

 

イラン核合意という記者にとって尋常ならざる事態だったとしても、他の選択肢を模索するべきだったのではないか

そもそも伊藤さんにイラン核合意の話をしてないし、むしろさかなクンの話をずっと聞いていたということですが、本当にイラン核合意のことが気になっていたのでしょうか。

 

ましてや、嘔吐したことを執拗に謝罪する伊藤氏に辟易としていながら、性行為を求めてくる伊藤氏の誘惑をきっぱりと拒絶せず性行為に及んでしまった事は痛恨の極みです

痛恨の極みといいつつ伊藤さんのせいにしてますが、そもそも休ませるためにホテルに連れてきたのですから、全く酔った様子もない状態まで回復したというのであればその時点で家に帰るように説明すれば良かったと思います。もはや採用の可能性は0だったでしょうから。

 

また山口氏は、

これまでジャーナリストである私を出演させたり、記事を載せたりしていたほとんどのテレビや活字の媒体は、伊藤氏の公表行為内容によって私に「デートレイプドラッグを使ったレイプ魔」である旨の悪人イメージがついてしまったことで、私を使うことを避けるようになってしまいました。

 

と述べているのですが、山口氏の説明でも「既婚者でありながら、自社の就職希望者と性交した」ことになりますので、その時点でメディア各社が「山口氏を使うことを避ける」という判断をするのもやむを得ないのではないかと思います。