*この記事は、下記記事を再構成し、山口氏の19年12月20日FB投稿について論じたものです。詳細な時系列などは下記記事の方が纏まっています。
#伊藤詩織氏のカルテと防犯カメラ動画の公開を求めます
https://mobile.twitter.com/search?q=%23伊藤詩織氏のカルテと防犯カメラ動画の公開を求めます&src=typed_query
このハッシュタグを投稿している人たちの言い分を読むと、「伊藤さんに対して」公開を求めているように読めますね。
2019年12月20日、山口敬之さんは以下のようなFacebook投稿を行い、【カルテと防犯カメラ動画の公開を求めます】と訴えました。当該ハッシュタグの文言と似通っており、ハッシュタグの考案者は山口さんの投稿を元にしたのかもしれません。
(山口氏がFB投稿を非公開設定にしたようですので、投稿からの引用部分を削除しました。 2020/11/2)
この文章をざっと読むと、伊藤さんは、都合の悪い証拠を隠蔽したことで裁判に勝った卑劣な人物のような印象を持ちますね。
本エントリでは、「カルテと防犯カメラ」のうち、防犯カメラについての考察を行います。
2017年9月28日 伊藤さん、訴状でカメラ映像開示を求める
伊藤さんはこの日、東京地裁に山口氏を提訴。訴状ではカメラ映像について以下のように主張。
シェラトン都ホテルに対しては本件訴訟提起前に、防犯カメラの映像の開示を求めたところ、裁判所から提出を命じられればこれに応じるとのことであったことから、文書送付嘱託の申立を行う予定である。
「文書送付嘱託の申立」とは、裁判所がホテルに対してカメラ映像の提出を命じるよう、裁判所に依頼する手続きのこと。
2017年10月24日 伊藤さん、防犯カメラ画像を見て欲しいと訴える
提訴後の記者会見で伊藤さんは以下のように語っています。
申し立てを行った際、特に注記をつけてお願いしたことがあります。それは私がタクシーから抱えられるように降ろされ、ホテルに引きずられていく防犯カメラの映像を、静止画ではなく動画で審査員の方々に見ていただきたいということでした。しかし実際に動画として証拠が提出されたのかどうかさえも分かりません。
その後、裁判所からの要請に応じるかたちで、ホテルから防犯カメラの映像が提供されたのですが、こちらのツイートに添付された画像で、大体の経緯が確認できます。
【閲覧報告】
— 小林 章 (@Akira_5884) 2019年8月20日
「甲15号証(ホテル防犯カメラ映像)」
●送付嘱託書
●回答書
●申し入れ書
注1)裁判外での使用は一切禁止。
注2)閲覧制限は特に設けられてないようだが担当書記官の判断?で私は閲覧できず#OpentheBlackBox #民事訴訟 #詩織さん #山口敬之 pic.twitter.com/qGynAbSc0C
2018年1月25日 送付嘱託書
まず一枚目の画像ですが、これは、裁判所からホテルへ、カメラ画像を送付するよう依頼する文書です。おそらく、これに先だって、伊藤さん側から、裁判所に対して「文書送付嘱託申立書」が東京地裁宛に提出されているものと思われます。
2018年2月7日 回答書
二枚目の画像です。ホテルから裁判所に対し、映像の送付にあたって以下のような条件がつけられました。
- 被告も提出に同意していること
- 防犯カメラ映像やそのキャプチャ映像を裁判外で一切使用しないことを、原告および被告が文書で約束すること
- プライバシー保護等のため映像にモザイク処理などを行い、その費用は然るべき者が負担すること
1.は、当然ながら映像には被告山口氏も映っていますから、山口氏側からの「なぜ勝手に映像を開示したのか」的な主張を回避するためにも、 ホテルには山口氏の同意を得ておくことで法律上の問題を回避する必要があるのでしょう。
2.は、いわゆる風評被害対策と思われます。例えばニュース番組やTwitterなどで映像が繰り返し流れ、「事件の舞台となったホテル」という印象が流布されることは、ホテルにとっては避けたいでしょう。
3.については、他の宿泊客や従業員などのプライバシー保全をするのは当然のことです。
これらの費用については、伊藤さんが負担したようです。金額にして38万0591円。なぜそんなに高額となったかというと、作業は現場のホテルの一室で行われたが、ホテルの室料や映像を編集する機材などをホテルに運び込むタクシー代が必要となったためとのことです。
↓参照。
2018年3月16日 被告→シェラトンへ誓約書提出
これは、上記ツイートには含まれていないので、別の閲覧情報から。
(同時期に原告もほぼ同内容の誓約書を提出していると思われる)
このように、原告・被告ともに、「裁判手続以外の場では一切使用せず、報道やインターネット配信しません」「ホテルの信用を毀損したり、誹謗中傷する言動は致しません」などと、ホテルに対して誓約しています。
2018年5月21日 申し入れ書
最後に画像三枚目。ホテルから裁判所へ、「プライバシー・風評被害対策を講じた」カメラ映像DVDを送付したことを通知しています。おそらく、原告用、被告用、裁判所用と3つあるいはそれ以上を送付した上で、「ダビングをしないように」と釘をさしているようです。
その後、防犯カメラ画像は報道やネット配信には用いてならないものの、裁判所の閲覧室では誰でも視聴することができる状態となりました。この経緯を見る限り、映像のネット/報道への公開を禁じているのはホテルによる風評被害対策であることがわかります。
そこでもう一度、伊藤氏代理人から山口氏代理人に送られた「申し入れ書」を読んでみましょう。
もう一度山口氏の投稿を読み直す
(こちらも削除しました。 2020/11/2)
ちなみに、小川榮太郞さんも「監視画像に閲覧制限をかけたのは伊藤さんだ」とは断言していません。
「ホテルの監視画像。これ今閲覧制限がかかっているんです。」「山口さんは当然閲覧制限をかけておりません。伊藤さんなのか、あるいはホテルなのか、そのあたりはつまびらかにしませんが。」
以上から、当該ハッシュタグを用いてツイートする方の中には、防犯カメラ動画を隠しているのは伊藤さんだ、とお考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、小川榮太郎さんはそのような主張はしていないことに留意するべきだと考えます。
なお、
「貴ホテルから訴訟以外での使用を禁止する旨の申し入れ書が東京地方裁判所に提出されていますが、これは本当に貴ホテルあるいは御社のご方針でしょうか」
「個別にこんな申入書を裁判所にされているのでしょうか」
「通常プライバシー保護の処理がされていれば、公開を制限する謂れはあるのでしょうか」
「噂では伊藤詩織氏の弁護団からこのような申入書を出すように、ホテル側に働きかけがあったと言われております」
などという記載があるようですが、怪文書の作成者自体が明記するように、これは単なる噂ですね。