伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

伊藤さんは最初の記者会見で「共謀罪の審議を止めろ」と言ったのか

あなたは五月の記者会見で、「共謀罪よりも強姦罪改正を優先して審議してほしい」と主張しました。私に大量の陰惨な誹謗中傷を送りつける方々の多くも、「テロ等準備罪」を「共謀罪」と呼び、廃案を強く求めています。これはまったくの偶然なのでしょうか?

hanada-plus.jp

 

 

 

 

 

 

共謀罪」と「性犯罪刑法改正」の関係とは

 

伊藤さんの2017年5月の記者会見での発言をおさえる前に、まずは「共謀罪」と「刑法改正」との関係について、事実経過を押さえておこう。

 

news.yahoo.co.jp

性犯罪刑法の改正は(2017年)3月7日に閣議決定共謀罪閣議決定(3月21日)よりも早かったが、与党は共謀罪の成立要件を改め、テロ等準備罪を新設する審議を優先。性犯罪刑法改正案の審議を後回しにしている。公明党は当初、審議の入れ替えに反発していたが、4月3日に合意した。

これに対し、弁護士の太田啓子さんらが、

「なぜ、法案提出順に従って審議順を決めるという慣例にあえて反してまで、性犯罪規定改正案をテロ等準備罪の審議よりも後にしたのか、自民公明党両党に対し、誠実な説明を求めます」

として8000筆の署名を集め、2017年4月27日に提出したのだ。

 

 

なお、この記事を執筆したのは、本ブログがたびたび参照・引用する、フリージャーナリストの小川たまかさんである。小川さんは2017年2月頃には伊藤さんと接触していたとのことだから、伊藤さんも小川さんからテロ等準備罪と刑法改正案の動きについて小川さんから聞いていた可能性は十分にある。伊藤さんが被害者として、刑法上の性犯罪の取り扱いが変わることを望み、「性犯罪の改正審議を後回しにしないで欲しい」と感じ、訴えることは違和感なく理解できる話だ。

 

 

 

5月29日・司法記者クラブ会見のノーカット動画は存在しない

www.jijitsu.net

 私も記憶の片隅にしか残っていないのですが、伊藤詩織氏はなぜか記者会見で「共謀罪」(テロ等準備罪)に反対する意見を言っていたんですよね。「それよりも刑法の強姦罪の構成要件の改正を希望します」というような言い方でした。

記者の質問に呼応した形だったのかどうなのか分かりませんが、そういうことではなかったような気がしています。

 

この「事実を整える」のねーさん氏が言うように、17年5月の会見動画は、地裁判決の頃には存在しなかった。理由はよくわからないが、私の想像では、この会見後に澎湃と湧き上がった伊藤さんへの誹謗中傷への対応として、動画の削除が行われたのではないかと考えている。

 

 

 

伊藤さんの5月29日会見については多くのメディアが大なり小なり報じたのだが、共謀罪との関連についての発言を報じたのはスポーツ報知。すでに記事が削除されているので、不本意ではあるが、まとめサイト・モナニュースからの引用を行う。リンク先は閲覧注意だが、当時から行われていた伊藤さんへのバッシングの雰囲気がわかると思う。

 

mona-news.com

安倍晋三首相を密着リポートした著書などで知られる元TBSワシントン支局長のジャーナリスト・山口敬之氏(51)から性犯罪を受けたとして告発した女性が29日、司法記者クラブで記者会見を行った。

女性は海外でジャーナリスト活動をしている詩織さん(28)=姓は非公表=。山口氏が、不起訴処分になったことを受け、29日付で東京検察審査会に不服申し立てをしたことを明らかにした。

詩織さんは、2015年4月4日に山口氏に都内のホテルに連れ込まれ、性犯罪被害に遭ったと主張している。顔を隠さずに会見し「性犯罪の被害者を取り巻いている法的・社会的状況が、被害者にとって、どれほど不利に働くものなのかを痛感しました。今回、こうしてお話しさせていただこうと決意したのは、そうした状況を少しでも変えていきたいと強く思ったからです」と話し、時折声を詰まらせながら経緯を説明した。
(略)
詩織さんは不起訴処分となったことに納得できず「私の知り得ない上のパワーがあったと思っています」と話している。また「今国会において共謀罪の審議が優先され、先送りになっている強姦罪の改正案がきちんと取りあげられるべき」と主張した。

http://www.hochi.co.jp/topics/20170529-OHT1T50146.html

 

 

現時点で確認できる、伊藤さんの会見での「共謀罪」発言について、ソースはこれしかない。言い換えると、他の新聞や週刊誌などは、伊藤さんの「共謀罪」発言についてとくに取り上げてないということだ(上記、ねーさん氏のブログでは、伊藤さんの会見を元に共謀罪についてシバレイ氏が解説しているyahoo記事を紹介しているが)。また、会見直後の6月2日には衆議院本会議では、本件について民進党井出庸生氏、および共産党の池内さおり氏が質問している。ここでも共謀罪と絡めた質問は行われていない。

 

kokkai.ndl.go.jp

 

 

さて、冒頭の山口氏手記に戻る。

 

あなたは五月の記者会見で、「共謀罪よりも強姦罪改正を優先して審議してほしい」と主張しました。私に大量の陰惨な誹謗中傷を送りつける方々の多くも、「テロ等準備罪」を「共謀罪」と呼び、廃案を強く求めています。これはまったくの偶然なのでしょうか? 

 

まず、別に伊藤氏は共謀罪の廃案を強く求めていない。

そして、山口氏を批難する人と共謀罪に反対する人が被るのは、例えば辻本清美さんの不祥事を批難する人にも一定の政治的傾向は見られることを思い出せば、特に不思議はない。共謀罪に反対の人が山口氏に批判的なのは、伊藤さんが共謀罪に触れたからではなく、山口氏の政治的立ち位置のせいである。山口氏はこの程度のことはわかっていながらこのような記載をしたのではないか。