伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

性犯罪被害者はなぜ激しく抵抗できないのか(トニック・イモビリティ説)

エントリタイトルとは裏腹ながら、まずlisanha氏のブログへの注釈から開始することとする。

 

lisanha1234.hatenablog.com

 

 

ここに男性用の身づくろいのアメニティーがおいてあって、電話に気がつかないなんて、ありえんだろ(笑)

鏡に電話写ってる。

 

↓地裁判決

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大体さ、痣なんて殴られた直後にはあまり外見上はわからないんだよ

1-2時間してから青くなるからね。

赤いならそれは血だよね、普通。 

 

伊藤さんは覚えている範囲のことだけ語っているので、ホテル入室後〜覚醒するまでのどの時点でコトが起こっていても不思議ではないのだが・・・。

 

それにこの時点で、ホテルだって気が付いたんだったら、

なんで、「トイレ」って言えるんだろうね?

最初からホテルってわかってたんでしょ?

山口氏の家だろうと、ホテルだろうと、およそ、トイレのない居住空間などめったにないと思うが、、

 

引きずり倒すような行動をしたら、どちらかが鏡にぶつかる無傷ではいられない。

なぜなら、クローゼットとユニットバスの間は1.2mしかない

大人が2人でごにょごにょできる幅ではない。

 

1.2mもあれば別に十分では・・・

 

通常息ができないというのは、気道がどこか塞がれている状態だが

頭を押さえただけでは、このベッドでは気道は塞がれない。

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これは、山口氏の顔が伊藤さんの顔の至近距離にある状態であったことに注意が必要。山口氏の顔が近くにあるから、恐怖のあまり呼吸ができなくなったという意味では?

 

 

ベッドから起き上がってドアを見るとこのようになる

ドアノブに気が付かないわけがない

 

証言通りだとこのようになっているはずだ。

黒いドアではないので、気が付かない方がおかしい

 

こういう写真は、入り口前のダウンライトを消して(当時の再現)広角で撮影(ドア側を凝視する理由がない)しないと、検証の意味がありません。

 

もう一つ、ツインルームなら、必ずベッドわきに電話が2台ある

これも頭を押さえられていたら、伊藤氏の両腕は空いているので、

攻防しながらでも電話に手をかけることもできる

 

「被害者が力強く抵抗しない理由」について、近年「トニック・イモビリティ(TI)」という概念が提唱されているようだ。

 

参考サイト

note.com

 

長いが、このエントリはこれを紹介したくて書いたようなものなのでしっかりと引用する。なお強調は引用者による。

法務省WGのとりまとめ報告書は、性犯罪被害者の反応や対処行動の原因やメカニズムを
①被害の最中又は直後:周トラウマ期解離、トニック・イモビリティ(TI、擬死状態)Tend and Befriend 反応(加害者への迎合的行動)

②被害に直面する前の心理やリスク認知:正常性バイアス、楽観主義バイアス

③被害後の精神症状:PTSD、解離

④継続的な被害にさらされた者の心理等:複雑性PTSD、性的虐待順応症候群、学習性無力と整理した。

心理学用語にピンと来ないかもしれないので、下着の中に手を入れるタイプの酷い痴漢を例に取って説明しよう。

痴漢が服の上から臀部に手を触れた時、いきなり「痴漢です!」と叫べる人は少ない。「もしかしたら、電車の揺れで手が当たっただけかも」「身体をよじって、私が気づいていると示したら、手を離してくれるかも」と思う。
この心理が、②被害に直面する前の心理やリスク認知の正常性バイアス、楽観主義バイアスである。

痴漢が下着の中に手を入れてきた時、凍り付いたように固まってしまう反応。①これが、周トラウマ性解離やトニック・イモビリティである。
痴漢によっては、被害者を見てニヤリと笑う者もいる。この時、加害者におもねるような表情をする被害者もいるが、これがTend and Befriend 反応である。

痴漢のような一過性の被害では、Tend and Befriend 反応は、ピンと来ないかもしれないが、職場で先輩から押し倒されるというセクハラに遭ったとき、なんとかなだめて怒らせないような言葉を選ぶ被害者は多いだろう。(引用者注:箕輪氏セクハラの一件が想起されるが、伊藤さんのケースなら4月6日のメールがこれに該当するのかもしれない)

このような酷い被害に遭った後、電車を降りてすぐ泣き出す被害者も稀である。③今あったことが信じられない、身体の感覚がなく、ぼーっとした感じ。これが解離である。

性犯罪被害者が主役となるコンテンツの金字塔「BANANA FISH」では、アッシュが、開いたままの目から涙を流して「何も感じないんだ…」というシーンがある。ショックを受けているから涙が出るのに、涙が出るときのように目の周りが力まない。涙が出るほどのショックを、「何も感じない」と認識する…アッシュはPTSDの諸症状が、キャラクターの中心要素になっている。(引用者注:伊藤さんの著書にも、15年4月10日〜13日頃に同様の描写がある)

④継続的な被害にさらされた者の心理だけは、痴漢の例を挙げにくいのだが、要は性的虐待を受けつつけた被害者の心理状態である。

性的虐待順応症候群の最も典型的な反応は,ア秘密,イ無力感,ウ罠にはまり,順応する,エ遅れた,矛盾する,信用されない開示,オ撤回である。

また学性(原文ママ)無力感は、何をしても状況は変わらないことを学習し,その状況から逃れる努力をしなくなることをいう。

以上のとおり、法務省WGの調査結果は、自分が被害に遭ったとして考えると、「うん、うん、そうだよね」という内容である。

しかしながら、これまで警察・検察・裁判所は、「性交が嫌なら、激しく抵抗するであろう」という「経験則」を用いて事実認定をしてきたのである。

その「経験則」が、実態にも、心理学的知見からも、なんの根拠もない「ただの思い込み」に過ぎないことが、法務省のWGの調査結果として明らかになった。これは非常に大きい。
これからは「激しく抵抗していなければ、同意だろう」という「経験則」は、「法務省WGの調査結果に反する」と言ってよいのである。

というわけで、本エントリはらめーん先生のブログを紹介するためのものでした。

 

なお、トニックイモビリティについてより詳しく知りたい方は、

www.moj.go.jp

 

↑このページの「議事録」をクリックすると読める。

 

こちらも重要なので長いが引用する。

それでは,議題1として,性犯罪被害者支援に携わる被害者心理学の専門家からのヒアリ

ングということで,本日は,武蔵野大学人間科学部長,同大学院人間社会研究科長でいらっ しゃる小西聖子教授に御出席いただいております。

先生の御経歴を御紹介させていただきます。

平成27年4月から武蔵野大学にて現職でいらっしゃいますが,政府関係委員等につきま して,内閣府犯罪被害者等施策推進会議委員,法務省法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 臨時委員などを歴任され,現在は,男女共同参画会議委員,同会議女性に対する暴力に関す る専門調査会会長,東京都犯罪被害者等の支援に関する有識者懇談会委員などに御在職して おられます。

また,犯罪被害者の精神状態に関する鑑定も多く手掛けておられ,本年3月に出版された 刑事精神鑑定ハンドブックにおいて,刑事事件における被害者の鑑定として,刑事事件被害 者の鑑定における基本的な委嘱事項,診断,鑑定の際の被害者への配慮等に関して御執筆さ れています。

本日は,そのような豊富な知見をもとに,刑法改正の影響とその評価,性犯罪被害者の鑑 定における課題等につき,お話しいただきます。

  それでは,先生,よろしくお願いいたします。

 

○小西先生

おはようございます。お呼びいただいて,ありがとうございます。

今のお話のとおり,私は,被害者支援の政策にも関わってきましたけれども,精神科医で, 臨床心理士公認心理師の資格も持っております。

 

 (大胆に略)

 

【スライド8】それを調べるには,国全体で採ったサンプルの調査が必要なわけですけれ ども,性犯罪についての調査は,聞き方によってもかなり変わります。内閣府の男女間の暴 力に関する調査,これ,男女共同参画局がずっと,平成11年から3年に一遍採っている調 査で,最初の平成11年の調査は,私のところも関わって,初めてこういう被害率を採った んですね。それでずっとやってこられていて,これは3年ごとじゃなくて,ちょっと6年で 採ってみました。平成17年,23年,29年です。

こちらは,無理やり性交等をされた体験が生涯にありましたかという,疫学の考え方でい うと生涯有病率,生涯経験率の数ですね。その値は,最初にこういう質問ができたところか ら,ほぼ変わらず,大体7%前後でした。6年ずつ採ってみますと,7.2,7.6,7. 8というふうに変わってきています。全国サンプルで2,000名ぐらいの調査です。

平成29年度は,男性にも聞くようになっておりますので,男性で1.5%という値が出 ています。

問題は,この中で,警察に相談する人の割合はものすごく低いです。医者に相談する人な んかもっと低くて,どちらも5%以下ぐらいですね。被害を訴えるというのではなくて,相 談という広い枠でそれぐらいなので,本当に低いんですけれども,それの中で,結局,友達にも家族にも専門家にも,誰にも相談しなかった人の割合というのを出すことができます。 その割合を見てみますと,平成17年度が64%,平成23年度が67.9%,平成29年 度が58.9%で,ここが下がってきているんですね。男性は39.1%という値が出てい ます。

 

【スライド12】今日,一つのお話ししたい焦点としては,性被害時に被害者がどういう 態度をとるのかということが,これは非常に研究も少なくて,日本語の文献だと,ほとんど ないような状況なんですけれども,実際に私が話を聞くと,被害時に本当に動けていないと かいう人がかなり多いです。後で,例えば検事さんや裁判官に,どうして逃げなかったのか とか,どうして抵抗しなかったのかということを聞かれて,例えば鑑定で,そういうことに ついて専門的な意見を付けなさいと依頼されることが多いわけですけれども,日本語で,そ のことについて示している論文というのは,残念ながら,余りまだないんですね。自分で書 けという話かもしれませんけれども,なかなかちょっと,そこまでまだ時間がなくてですね。

(略)

どこでも共通していることは,抵抗が外見上明確な行 動,例えば殴る,蹴る,騒ぐとか,そういうものよりも,消極的な抵抗行動,泣くとか避け るとか,加害者にやめるように言うとか懇願する,説得するというのもありますけれども, この程度の抵抗行動の方が,被害者には多いということが分かっています。

それから,もう一つ,積極的な行動を何もとらない人,それから,凍り付いた,何もしな かったというふうに言う人というのは,どの調査にも必ずいまして,率が多分,皆様が思っ ているより高いのではないかと思いますが,18%から69%というふうになっていました。

18%とか,この間の50からちょっと下ぐらいの,3,40%という値は,自分の臨床 的な印象と,非常に一致いたします。何もしないという人と,それから,泣いたり,やめて くださいとは言ったという程度の人まで合わせると,かなりの割合になるというのが実際の 状況です。

一応,積極的な抵抗,消極的な抵抗,それから行動をとらないの五つぐらいに分けて,ち ょっとパーセントを出してみたんですけれども,ここにあるのは,一番共通して言われてい ることでした。

そういう意味では,今日は,抵抗できない人のお話を事例として挙げたいと思っています が,そういう人がまれではない。特に病理的な理由がなくても,例えば,よく話題になるの は,長期監禁があったケースなんかで,物理的には逃げられるはずなのに逃げていないとい うようなケースのことは話題になりますけれども,そういうケースでなくても,本当に何も できないということが,ごく普通の被害者にあり得るというケースをお示ししたいと思って います。

 

【スライド15】それでは事例に入っていきたいと思います。

この事例1は,タイトルとしては,見知らぬ加害者が部屋に入ってきた直後に,全く体が 動かなかったということが一つの争点になっていて,そのことに関して鑑定をというふうに いただいたもの(略)

 

 

【スライド16】 トニックイモビリティの説明

(略) 

【スライド18】事例の2は,優越的な地位にある加害者にラブホテルに強引に一緒に連 れ込まれ,性交されたが拒否できず,後でPTSDを残した例

 

また、15ページ目からは検察官と小西教授との間で質疑応答が行われているが、色々な観点から興味深く読める内容になっているので、本件に興味ある方には一読をお勧めしたい。