伊藤詩織さん民事訴訟を応援するブログ

伊藤詩織さんの民事訴訟について、裁判資料や報道を元に検証します。伊藤さんを不当に貶める言説に触れてしまった人の心を癒やせる内容になるよう頑張ります。「伊藤詩織さんの民事裁判を支える会」とは関係なくやっておりますので、内容について同会への問い合わせなどはお控えください。

伊藤さん事件 時系列チェック⑤a 4月3日 タクシーを降りてから「伊藤さんの主張、タクシー運転手・ドアマン証言の一致/不一致点」

 

時系列チェックシリーズ バックナンバー紹介

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山口さんが「来週後半、空いてる夜はある?」と伊藤さんに送信した20分後に、予約サイトで「来週後半」の事件の舞台となったホテルを予約した。このホテルは山口さんの東京での用務先からは交通の便が悪い上、値段も高くシングルルームの設定がない。

 

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1.山口氏は、伊藤さんと落ち合う1時間前にホテル客室にいたと思われるが、裁判では「すでに店にいた」と主張。何かを隠している可能性がある?

2.山口氏は伊藤さんと落ち合った時点でTBSから自宅待機命令を下されていた。

 

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串焼き屋・鮨屋の店員さんが証言する伊藤さんの酒量や両者の話題は、前後関係と整合しない部分が多い。本当に真実を語っているのか疑問の余地がある。

 

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山口氏は、伊藤さんが泥酔してしまいやむなくホテルで休んでもらう選択をしたと説明しているが、伊藤さんの自宅の場所を聞くことすらしていない。また、当時山口氏は自宅待機命令中であり、急いでするべき仕事などない。

 

〜バックナンバーここまで〜

 

 

 

 

 

 

こんにちは。このエントリでは、伊藤氏、山口氏がタクシーから降りてからホテルの部屋に入るまでについて考察します。今回のエントリでは、伊藤さん側の主張、およびタクシー運転手・ドアマンの証言を検討した上で、カメラ画像を実際に見た方たちの報告を紹介します。

 

 

ざっくり言うと

 監視カメラ画像を見ると、伊藤さんがタクシーから出るまで2分以上かかっており、降りる際には山口さんが腕を肩にかけている。降りてからも一人で歩ける状態ではなかった。タクシー運転手やドアマンも同様の主張をしている。

 

1.伊藤さんの主張:原告準備書面(18年6月27日・19年9月13日)

まず、裁判での伊藤さんの主張を確認。

 

 

 

上記2件の報告をまとめると、内容は概ね以下の通り。 複数のカメラの映像について、時系列に沿って描写します。カメラごとに数秒ずつズレがあるのかも・・・?

 

A)23:19:58  タクシーがホテルの車寄せに到着。防犯カメラはタクシーの後方からの視点。被告の後頭部は見えるが、原告の頭部は基本的に映っておらず、時折急に頭を上げるような動作がみられた時のみ見える状態

B)23:21:30  タクシーのドアが開く

C)23:21:50  被告だけがタクシーから降りてくる

D)23:22:03 被告が再度車内に戻る

E)23:22:15 ドアマンがタクシーのドアに手をかける

F)23:22:34 原告の左腕を被告の左肩にかけるようにして被告が原告をタクシーの車内から引っ張り出している

G)23:22:43 原告が前屈みになるようにして車から降りてくる

H)23:22:47 原告が不自然に被告に身体をもたせかけるようにして歩いている

I)23:22:58 1階ロビーを、被告に支えられながら原告が不安定な歩調で歩く。重心がしっかりせずふらふらしている。

J)23:23:04 曲がる際は被告が右腕で原告の左腕を引き付けるような格好。原告が体勢を崩しかける。

K)23:23:16-18 エレベーターホールに入るとき右折。その時原告の上半身は後方にバランスを崩す。

L)23:23:21-23 その後数歩前進しエレベータのボタンがある壁にもたれかかる。カーディガンは肩から上腕部までずれおち、右腕は脱力してぶらぶらとふられたまま歩いている。

M)23:23:23-27 被告に引っ張られるようにしてエレベータに乗り込む。

 

 

ポイントは、

1)車が止まってから、精算が済み山口さんが車外に出るまで2分近く経っている。伊藤さんは車内で頭を垂れた状態(A-C)。まず山口さんが一人だけ車外に出るが、山口さんは再度車内に戻る(D)

2)ドアマンが到着(E)

3)山口さんが手助けをして伊藤さんが車外に出る(F,G)

4)伊藤さんは山口さんに身体をもたせかけるように歩いており、時折バランスを崩したり、着衣が乱れている(H-M)

 

です。車外に出るのに時間がかかったのは伊藤さんがぐったりとしていたからだと思われます。

 

2.EvTRiMCgさんによる閲覧報告

mobile.twitter.com

 

次に、伊藤さんの裁判記録を閲覧されている方からのご報告を紹介。

 

https://twitter.com/EvTRiMCg/status/1176139520065933312?s=20

 

L')23:23:21-23 山口さんは右脇に伊藤さんの左上腕をがっちり挟み、かなりの負荷が右腕にかかった状態で、左腕を伸ばしてボタンを押した。伊藤さんがエレベータホールの壁に腕をついたのは、直前に後方にバランスを崩したあとの反動に過ぎないように感じた。カーディガンはロビーを進んでいくうちにこんなふうにズレていき、フロントを通り過ぎた頃には両肩が見えるようになっていた。(実際のカーディガンは白色)

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N)23:22:43 伊藤さんがタクシーを降りた後、ドアマンが運転席側に歩いて行き、運転手さんが車から降りてくる。会話を交わしているかまでは映像からはわからない。

O)23:23:38 タクシーが出発。

 

NとOについては、後にドアマンとタクシーの証言を紹介する際に再度触れます。

 

3.タクシー運転手の陳述(2017年6月26日)

 

次に、前回のエントリでも取り上げた運転手さんの主張について検討します。主に、伊藤さんの裁判での主張との一致点を取り上げます。

 

・男性の方が料金を支払って、女性に降りるように促していたのですが、女性の方は一向に動きませんでした

→到着直後の状況について、上記A-Dと一致。

・その後、男性は女性の身体をドア側に引き寄せようとしたのですがうまくいかず、いったん先に降りてカバンを車外に置いてから、女性の脇に自分の肩を入れ引きずり出すような形で女性を車から引き下ろしました

→伊藤さんを車外に出す部分について、上記F,Gと一致。

・その後も、女性が自ら歩いて行くというよりは、男性に抱きかかえられるような感じでホテルに入って行きました

→車寄せからエントランスまで、上記Hと一致。

・吐瀉物は車を出してから気づいた。奥の後部座席の下に吐かれていた。匂いはいわゆるゲロの匂いとも違い、酢と洋酒を混ぜたようなもの。液状ではなく、ネタが混ざったご飯が少し消化された状態。

→吐瀉物の形状について、後述するドアマンの証言と一致。ただし、運転手さんが吐瀉物に気づく経緯に齟齬がある。後述します。

 

4.ドアマンによる陳述(2019年10月23日)

www.dailyshincho.jp

 

ドアマン陳述書を最も詳しく描写している新潮の記事から。概要を見ていきます。

 

・(後部座席左側のドアへ出向くと)その時に手前に座っていた男性と目が合い、怖い印象を受けました。そして、奥に座った女性に腕を引っ張るようにして降りるように促していた。女性の方は(中略)「そうじするの、そうじするの、私が汚しちゃったんだから、綺麗にするの」というようなことを言っていました。女性は左側のドアから降ろされる時、降りるのを拒むような素振りをしました。「綺麗にしなきゃ、綺麗にしなきゃ」とまだ言っていたので、座席にとどまって車内を掃除しようとしていたのか、あるいはそれを口実に逃げようとしているのか、と思いました。それを、男性が腕をつかんで「いいから」と言いました。

山口氏が伊藤さんを引っ張るようにして降りるという部分が一致(E-G)。防犯カメラでは死角になっていたようだが、伊藤さんが拒むような素振りをしていた様子。

・当初なんとなく幼児の片言みたいに聞こえ、「何があったのかな」と思っていたら、車内の運転席の後ろの床に吐瀉物がありました。(中略)こんもりと固形に近い形でありました。

タクシー運転手の描写する嘔吐物の形状、位置と一致。

・(クルマを出てから)足元がフラフラで、自分では歩けず、しっかりした意識の無い、へべれけの、完全に酩酊されている状態でした。「綺麗にしなきゃ、綺麗にしなきゃ」という様な言葉を言っていましたが、そのままホテル入口へ引っ張られ、「うわーん」と泣き声のような声を上げたのを覚えています。

→ 車寄せからエントランス部分まで、上記H.「原告が不自然に被告に身体をもたせかけるようにして歩いている」と一致

 

さて、実はドアマンの陳述書は他にもこのようなことを述べています。

 ・運転手さんは運転中ですし、真後ろの席のことですから、吐瀉物には気が付かなかったのです。運転席から降りて、外から後部座席を見て、初めて気づいて「うわあ」となり、私もそばへ行って一緒に見ながら、「ひどいですね。今日はもう営業所に戻って掃除だから仕事にならないでしょう、あがったりですね」という会話をしました
→この部分がタクシー運転手の陳述書と齟齬があるということで、山口さんを擁護する立場の人達が「タクシー運転手、ドアマン、いずれの陳述も信用できない」と主張しています。ですが、EvTRiMCgさんの報告【N)23:22:43 伊藤さんがタクシーを降りる。その後、ドアマンが運転席側に歩いて行き、運転手さんが車から降りてくる。】にあるように、運転手とドアマンがなにがしかやりとりをしている様子は見て取れます。運転手さんはドアマンとのやりとりはあまり覚えていなかったのでしょうか・・・?
 

5.小林よしのりさんによる描写

小林よしのりさんが、ゴーマニズム宣言2nd stage 第42宣言で、防犯カメラの閲覧内容を漫画にしておられますので、引用を行います。

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 キャプションでは「ずいぶん時間がかかっている」という描写があり、漫画では山口さんがドアマンの助けを借りずにタクシーから降ろそうとしている様子が描写されています(D,E,Fあたりと一致)。
 

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車寄せからエントランス部分まで、山口さんに抱えられるようにして伊藤さんが歩く姿が描写されています(Hと一致)。

 

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I「1階ロビーを原告が不安定な歩調で歩く。重心がしっかりせずふらふらしている」と一致。また、この漫画ではカーディガンの描写がなされていませんが、右腕が力なくふらふらと動く様子が忠実に描写されていると感じます。

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Kの部分。伊藤さんがバランスを崩す部分は描写されていない。EvTRiMCgさんが言うように、山口氏はこの状態でエレベータのボタンを押すのは大変だっただろう。

 
 
 
以上、本エントリでは監視カメラ画像とタクシー運転手・ドアマンの証言や小林よしのりさんによる描写はほぼ一致していることを示しました。次のエントリでは、山口氏の主張について取り上げ、判決がどのような認定を行ったかを取り上げることとします。